那須烏山で豚熱確認から1週間 北関東で続発、原因は

防疫作業を進める県職員ら=24日午後、那須烏山市(県提供)

 那須烏山市の大規模農場で豚熱(CSF)の感染が確認されてから、30日で1週間。殺処分頭数は国内最多の約5万6千頭に上る。防疫措置は2カ月超に及び、原因を探る国の疫学調査が続く。国内で発生した直近の7例は北関東3県に集中しており、要因の一つに地理的特性を挙げる学識者もいる。多くの事例に見えるのは野生鳥獣対策の難しさ。今回の原因究明は疫学調査に委ねられている。

 同市の豚熱発生は国内で83例目、本県で4例目となった。殺処分頭数は昨年4月、那須塩原市で発生したケース(3万9千頭超)の1.4倍の規模で、県は県内全25市町と県建設業協会、農業関係団体などの協力を得て防疫措置を進める。

 今年に入り、確認された豚熱はいずれも北関東で発生した。農林水産省の疫学調査では、野生鳥獣対策の不備に関する指摘が目立つ。

 豚熱は豚とイノシシが感染する病気で、野生のイノシシのほか、鳥、ネズミなどの小動物を介し、ウイルスが農場へ侵入するのを防ぐ必要がある。日本獣医生命科学大の羽山伸一(はやましんいち)教授は「北関東は山地が多く、南関東などよりも野生イノシシの分布が連続的だ」とリスクの高さを指摘する。

 県は昨春以降、豚熱の対策徹底に力を入れてきた。今年2月までに県内全147農場で立ち入り検査を実施し、国の飼養衛生管理基準に適合しているかを確認。7月中に、野生動物の侵入防止など各種対策がそれぞれの農場で完了する見通しだった。

 県によると、発生農場でも防鳥ネットの不備が指摘されたが、6月に県が改善したことを確認していた。飼育豚のワクチン接種についても、県の担当者は今月23日の記者会見で「適切な時期に接種していたと思われる」と説明した。

 豚熱は1頭でも感染が確認されれば、全頭処分を避けられない。今回、死角はなかったのか。発生農場の担当者は下野新聞社の取材に対し、「行政の調査が行われているので、個別の質問への回答は差し控えさせていただく」と答えるにとどめた。

那須烏山市の大規模農場で発生した豚熱(CSF)関連の経過

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