日本で1億円以上の金融資産を持つ人の割合は?「億り人」を目指すために必要なこと

「老後2000万円問題」を機に、老後資金を用意できるか不安に感じる人が増えました。

そこで、経済評論家・佐藤治彦( @SatoHaruhiko )氏の著書『素人はボロ儲けを狙うのはおやめなさい 安心・安全・確実な投資の教科書』(扶桑社)より、一部を抜粋・編集してお金が増えない理由について解説します。


日本で1億円以上の金融資産を持つ金持ちはどのくらいいるのか?

金融資産、つまり、土地などの不動産などではなく、預貯金や株式などで1億円以上の資産を持っている世帯は全体の2パーセントくらいです。日本の場合です。

3億円以上の資産となると全体の0.2パーセント。大金持ちの家庭に生まれて親から財産をもらえるということもありますけれども、それはごく一部の話ですよね。ほとんどの人に関係ないし、そうやってお金をすでに持ってる人は、きっとこの手の本は読んでません。ですから、ほとんどの人にとって1億円の金融資産を持ちたいということは、ゼロからその2パーセントになる挑戦をするわけです。

それでも、スター歌手やプロ野球の選手になるよりは、よほど実現性がある夢だと思います。だからでしょうか、多くの人がもう少し、いやもっとお金がほしいと思うのです。

叶わない夢ではないのです。ですから、自分の力量も考えて、このくらいほしい、いつまでにほしいという実現可能な、具体的な目標を持ってもらいたいのです。夢でなく計画にしてほしいのです。お金を増やしたいなら、夢のまま放っておくのではなく、自分にできる目標と計画に落とし込む。それが大切です。

目標を達成するために何をすればいいと思いますか?

お金は運や祈りで増えると思っていませんか?

もっとお金がほしいと神社仏閣に祈ったり、金運財布を買ってもお金は増えません。

宝くじを買う。

まあ、ごくごくごくごく稀にそうした運で増えることもあるから厄介なのですが、そんな感じでお金と向き合うと、どでかく損をすることもありますから注意してください。

ちなみに、宝くじは基本的に損する仕組みになってます。宝くじの販売で集めたお金の半分ほどしか当せん金に回さないからです。

お金に困る生活、余裕のない生活から脱却する

あなたの生活、あなたの人生を変えるための行動です。子どもみたいな考え方は、早く捨ててください。夢を見るだけでいつも実現しない人生なんてやめましょう。もう一度言いますね。この夢は叶えるための目標と計画にしなければいけないのです。

ですから、具体的に考えてください。つまり、お金を増やすといっても、10 年かけて500万円増やしたいのか、毎月の生活を少しでも楽にするために、あと数万円、もしくは数千円でいいから増やしたいのか。それとも、数百億円をキャッシュで払って宇宙旅行に行ける前澤友作さんのような超大金持ちになりたいのか?

それによって取るべき選択も、やるべきこともまったく違ってくるわけです。ちなみに、私は高校の時に、35歳くらいまでに、大した贅沢はしなくてもいいから、
嫌な仕事をしなくても、食べるお金には困らないくらいの資産がほしいと思いました。

これなら、運に頼らなくても、きっと手に入ると思った目標でした。

テレビに出た時は億り人だったかもしれないけれど……

株式や債券などの投資によってちょっとした資産を作る人がいます。皆さんにもその一人になってもらいたいです。

この話をする前に、注意してほしいことがあります。多くの人にとって、株式投資は面白くなって熱中しすぎてしまうものだからです。いろんなことを考えて、投資をするとお金が増えたり減ったりする。スリルもあり面白いです。時には1か月分の給料をさっと得ることもできる。リアルなゲームのようです。だから、心を奪われます。

会社員なのに、仕事時間もスマホで株価を度々チェックするようになったら黄色信号です。投資に気が取られて、真面目に働けば、きちんと給料をもらえる正業の仕事が生半可になったら元も子もありません。

3億円以上の資産を、株式や外国為替、商品先物などの金融市場の取引で手にする人もいます。しかし、手堅い投資では、よほどの元手がある人以外は手が届きません。

投資したものが短期間で2倍になるということは、ごくごく稀なことです。元手が200万円程度では、2倍で400万です。倍々に増えて、800万、1600万、3200万、6400万、1億2800万、2億5600万。3億円近い資産を作るには、奇跡的なことが7回続けて起こらなければ実現しないのです。

また、「億り人」という言葉があります。こちらは株式などで1億円以上の資産を作った人のことを言います。一時期、FXやビットコインなど、相当リスキーな運用をして儲けた人のことをメディアでもてはやしました。一攫千金系の成功物語のように扱いました。今でも、それが実現可能だと思っている人も少なくありません。

日本全国の何千万人の人が、1億円がほしくて何万円も出して宝くじを買うわけですからうらやましいのはわかりますが、まずは、億り人になった人はごくわずかだということを忘れないでください。

ハイリスクな運用に手を出した人の大多数は、手持ちの金がほとんどゼロになってしまった。それならまだいいほうで、借金を背負った、中には借金に耐えられなくて自殺したという例も少なくありません。

私がメディアで見かけた億り人は、資産1億円の億り人と紹介されていたのですが、深く考え判断して投資して儲けたというよりも、普通の人があれよあれよという間に資産が増えただけに見えました。あえていうと、たまたま儲かってしまったのです。投資の能力があったわけでも、先見の明があったわけでもありません。ビットコイン(暗号資産)で1億円持ってるとのことだったので、私は心配しています。暗号資産はその後、乱高下したからです。1億円はあっという間に3000万や5000万、いやそれ以下になってしまったかもしれません。

あぶく銭ですね。そして、泡は例外なく弾けて消えていくものです。

投資は宝くじでも博打でもない

日本では1990年初頭までのバブル経済の時に、不動産価格が上がって豪勢な生活をした人がいました。住んでる一戸建ての価値が2億円と聞いて、年収500万円の人は驚いたものです。しかし、それは長く続かなかった。

全部弾けた。しぼんでしまった。これもあぶく銭だったわけです。

かつて、NTTが東京証券取引所に初上場した時に、一般公募で売られた株式は119万円。それが取引開始後あっという間に300万円を超し、318万円まで値をつけた。多くの人の欲望に火をつけました。株式ブームになるのもわかります。300万円を超した時には、NTT株は500万になるという本が何冊も出ました。それを信じて買った人は、ひと財産をなくしました。その後NTT株は急激に下がっていったからです。

私の知り合いは300万を超したNTTの株式が240万くらいに落ちた時に、ここまで落ちたらもう落ちないだろうと、10株買いました。2400万円です。しかし、その2400万円から増えることはまったくありませんでした。その後もズルズルと落ちていき、知り合いがもうダメだと10株を手放した時には1200万円になっていました。半分になるのにそれほど時間はかかりませんでした。

私は皆さんにお金を儲けてほしいと思ってこの本を書きました。

しかし、一瞬だけ儲かった気分になるあぶく銭系の話をここでしようと思いません。

手堅く運用して5000万円を手にした人が、もっと金がほしい。3億はほしいと思ったとします。それには相当にリスキーな投資をしないと手が届きそうにありません。

それでも、手にした5000万円をかけて3億円にしたいですか? さらに、なんとか成功した3億円をかけて、10億を目指す。そんなことしたいでしょうか?

テレビのクイズ番組でよくありますが、あなたが出演者なら、クイズに正解して、すでに手にした50万円をかけて、100万円もらえる次のクイズに挑戦しますか?
外れたらゼロです。手にした100万円をかけて200万円もらえるクイズに挑戦しますか? 外れたらゼロです。クイズは難問ばかりです。

そんなことに挑戦するのは、テレビ番組を盛り上げるために出演しているタレントさんだけではないでしょうか?

ハイリスクな投資とは、5000万円、1億円という大金をかけて同じようなことをしているわけです。ゼロにはならなくても数千万円を減らすのはあっという間です。そして、一度、損をすると、損した分を取り返そうと、倍返しだとばかりにさらにリスキーな投資の深みにはまっていくものです。そんな時には、冷静な判断もできなくなっていて、とどのつまりはお金をさらに減らしてしまうのです。

私は銀行員時代に間違った取引をしてしまい、一瞬のうちに銀行にそこそこの損失を負わせた経験があります。めちゃくちゃ叱られました。当たり前です。自分の年収の何倍もの損失を自分のミスで負わせたわけですから。その後も、数千万、数億円が一瞬のうちに金融市場の中で溶けていくのを何回も見てきました。

世の中には宝くじで3億円を手にした人がいることは知っていても、自分も確実に手にできるとは誰も思わないでしょう。たまたま運が良かった人の成功例を他の人が真似てうまくいくのであれば、日本中みんな大金持ちです。

日本で貯蓄がまったくない人はどのくらいいるのか?

富裕層とは真逆の人が圧倒的に多いのが今の日本です。毎日の生活がカツカツで貯蓄がまったくない。もしも仕事を失ったら、食べていくのにすぐに困るという人。日本の現役世代の3割近くは貯蓄がゼロ。貯蓄100万円以下の世帯まで入れると3分の1以上です。こちらがメジャーです。

これらの人たちがまず望むことは一発逆転ではなく、生活の安定でしょう。急に仕事を失ったとしても数年間は食べるのに困らない生活を手に入れてほしいです。こういう方たちが、100万円の貯蓄があったとしても、それを株式投資など減らすリスクのあるものに投資することは正しい選択でしょうか?

もしも、カツカツの生活からの脱却であれば、まずは手元の虎の子の100万円の貯蓄は確実に守る。少しでも安全に増えるところ以外は手を出さないはずです。

このような人たちが、今の時点ですべきことは、生活の見直しと生きていく上での知識と知恵を身につけること。そして、毎月少しずつでもいいので貯蓄を増やしていくことです。生活に余裕ができ、貯蓄も十分に増えてから投資に手を出すべきだと思います。

今の仕事を失ったら来月から食べるのに困る。そういうお財布事情だと、ブラック企業でこき使われても、モラハラやセクハラに悩んでいるとしても、退職はもちろん、転職さえなかなか踏み出せないものです。それでは、現代の奴隷です。

そんな奴隷のような仕事から抜け出すこと。人間らしく笑顔とともに暮らす。時には少し高いスイーツを楽しみ、値段でなく気に入った洋服を買い、年に1、2回は旅行を楽しむ。子どもが希望するなら稽古ごとなどをさせてあげられる。そんな暮らしのための経済的な安定を手に入れてください。

著者 佐藤治彦

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本書は、手持ちの資金を短期間に10倍、20倍にする本ではありません。
そこそこ資金のある人が、失敗しない投資で、セミFIREを目指す、老後の資金を手厚くする、もう少しの贅沢ができるようになる。
そんな「確実に試算を増やす」ための本です。
投資の手法は王道中の王道「安く買って、高く売る」。
当たり前のようですが、みんなこれができないのです。
投資初心者が投資で勝てるチャンスは、年に1度か2度しかありません。
そして今がそのチャンスだと思うのです。
元手がない人はどうするかも書きました。
日本に「中金持ち」が増えますように!

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