栃木県内で新型コロナウイルス感染が急拡大する中、那須烏山市の「山あげ祭」で140人以上の関係者が集団感染した問題を受け、6、7の両日に宇都宮市大通りで開催予定の「ふるさと宮まつり」など大規模な夏祭りへの懸念が広がっている。県都の夏の風物詩だけに、主催者は「感染防止対策の徹底」を掲げるが、周辺からは「本当にやるのか」と不安の声も。専門家は「どんなに対策をしたとしても、感染の危険は避けられない」と指摘する。
7月下旬に開催された山あげ祭は、関係者に事前の体調チェックやマスク着用を求めたものの、猛暑もありマスクを外したり、どうしても大声が出たりした場面もあったという。
宮まつりは「次代につなげる必要がある」と開催委員会が今年、3年ぶりの開催を決定。8月1日には山あげ祭での集団感染を受けて、運営スタッフ全員に祭り当日の抗原検査を実施することを決めた。当日は感染対策として、観客エリアを新設して密集を防ぎ、みこし渡御やパレードは距離を保って行うとしている。
だが会場に近いオリオン通り商店街の関係者は「『怖い。本当にやるのか?』という不安の声が多い」と明かす。感染して営業できなくなることを恐れ、当日の出店を取りやめる店もあるといい「宮まつりは経済的にはありがたいが、歓迎する店ばかりではない」と複雑な面持ちだ。開催委員会は、まん延防止等重点措置が適用されれば、開催を中止する方針。一方、県は2日現在、山あげ祭での集団感染を踏まえた注意喚起などは行っていない。
自治医科大の中村好一(なかむらよしかず)教授(公衆衛生学)は「県内で感染がまん延する中、山あげ祭での集団感染があったにもかかわらず、祭りを開催するのは大いに疑問だ」と指摘。「盆休みにかけて、医療逼迫(ひっぱく)に拍車を掛けることになりかねない」と警鐘を鳴らす。
県内では7月以降、小山市の「祇園祭」や真岡市の「荒神祭」、日光市の「龍王祭」などが規模を縮小するなどして行われた一方、壬生町の「八坂祭」、佐野市の「さの秀郷まつり」など、感染拡大を受けて中止した祭りもある。