「何のために」「ひどすぎる」 無断で桜切られる、半月で2件 宇都宮・古賀志山の私有地

切り倒された桜を指差す北條さん。後ろの岩場が「猪落」

 栃木県宇都宮市の古賀志山南斜面の登山道近くの私有地で、6年ほど前に植樹された桜が何者かに無断で伐倒された。高さ約3.5メートル、直径10センチほどに育った幹には、のこぎりで切ったような形跡がある。地主の古賀志町、会社社長北條哲男(ほうじょうてつお)さん(76)は「何のためにこんなことを。丹精して育てたのに残念」と嘆いている。

 城山西小から古賀志山方面に向かう林道沿い。北條さんはこの山麓に約16ヘクタールの広大な山林を所有している。2016年にスギやヒノキを全て伐採し、「古賀志山を桜の名所にしたい」と私財を投じて苗木約3200本を植えた。

 植樹したのは舞姫、神代曙(じんだいあけぼの)などの珍しい品種の桜ばかり。今春には見事に咲いた樹種もあった。山麓が桜の花で埋め尽くされるのを想像しては、下草刈りに精を出していた。

 被害に気付いたのは7月21日。一緒に入山した従業員が最初に発見した。現場は作業用の道沿い。車で気軽に入れるような場所ではない。近くにはロッククライマーに人気の岩場「猪落(ししおとし)」と呼ばれる人気のスポットがあり、すぐ上には登山道もある。半月ほど前にもこの先で桜1本が何者かに切り倒されたばかりだった。

 北條さんはNPO法人「古賀志山を守ろう会」の副理事長でもある。先祖代々受け継いできた山を開放してきたが、ランなどの希少植物の盗掘にも長年悩まされてきた。今回の出来事には「いたずらにしてもひどすぎる」と、ショックを受けている。

 「登山者やロッククライマーとむやみに対立したいわけではない」と北條さんは言う。しかし今回のような事態を避けるため、林道から作業用道路に一般人が入れないよう柵を設置することを検討している。

切り倒された桜を指差す北條さん

© 株式会社下野新聞社