新型コロナウイルスの患者急増に伴い、県内の入院受け入れ病院で医療が逼迫(ひっぱく)し、通常診療との両立が危機にひんしている。医療従事者の感染も相次ぎ、確保病床を十分に活用できていない。救急車の受け入れにも影響。重症化しづらいとされていた子どもでも、入院が必要な患者が増えている。関係者は救急車の適正な利用や、子どもを含めたワクチンの接種を呼びかけている。
「病院としての通常の機能が失われつつある」。宇都宮市の国立病院機構栃木医療センターの矢吹拓(やぶきたく)内科医長は危機感をあらわにする。
同センターは県内最多の54床をコロナ病床として確保する。しかし医師や看護師などスタッフの感染が増え、通常医療との両立のためには用意した半数程度しか運用できない状況だ。矢吹医長は「重症化リスクが高い人は入院するという戦略が取れなくなっている」と話す。リハビリなどにも影響が出ているという。
コロナ疑いの救急搬送も増加。隔離スペースで診察するため、人と時間が割かれる。患者が何度も搬送を断られるケースも増えており、宇都宮市内の輪番救急体制について「崩壊しつつあるのでは」と危惧する。
矢吹医長は、現状を乗り切るためには患者側の協力が不可欠だと考える。体調不良がある場合、早めに外来での受診を検討するなど、救急車の適正な利用を呼びかける。「医療資源は無限ではないということを理解してほしい」と求めた。
小児の重症患者に対応してきた自治医大とちぎ子ども医療センターでは、第7波で子どもの入院患者が増加。けいれんを起こす患者が増え、急性脳症や心筋炎を発症するケースもある。
これまでは、症状が落ち着けば他の病院へ転院してもらい次の患者に対応してきた。しかし、転院先もコロナ患者の増加や医療者への感染拡大で逼迫。地域全体で小児患者の受け入れが難しい状況に陥っている。
小坂仁(おさかひとし)センター長は「コロナは『子どもは感染しても軽症だから大丈夫』という病気ではない」と指摘。重症者の多くはワクチンが未接種だとして「子どもを守るため、ぜひ接種を検討してほしい」と訴えた。