無許可で臓器移植あっせん疑い 昨年渡航した藤沢の男性が証言「うそで固められた」

やりとりの証拠や資料を手に証言する小沢さん=藤沢市

 横浜市に事務所を構えるNPO法人「難病患者支援の会」が海外での臓器移植を無許可であっせんしていたとされる問題。ラグビーの選手や指導者として活躍した小沢克年さん(53)=藤沢市=も腎移植のために渡航した。神奈川新聞の取材に応じ、「うそで固められて連れて行かれた。実態を知っていれば行かなかった」と胸の内を明かした。
 
 昨年12月、キルギスの首都ビシケクで案内されたのは5階建ての建物だった。執刀医との面談を待っていると、エレベーターで続々と医療機材が運び込まれて「即席病院」が作り上げられ、不安が募った。

 小沢さんは、渡航前の説明と実態が大きく異なると訴える。「国立病院で、信頼できるトルコ人、インド人の医師が執刀するのでご安心くださいと言われていたが、実際はエジプト人医師だった」

 説明と異なったのは医療体制だけでない。違う病院で事前検査を受けた日の夜、NPOの実質代表の男性から「今日の病院にいた女の人たちの中の1人がドナーだよ」と告げられた。生体臓器移植とは聞いておらず、「大丈夫、脳死の書類は作れるから」などという男性の言葉に「すべて合法と聞いていたのに全然違った」と驚いた。

 帰国するべきか悩み始めた中、一緒に渡航した50代の日本人女性に対し、エジプト人医師による手術が行われ、一時重篤な状況に陥った。イスラエルから来た2人の患者は死亡したと聞いた。

 さらにNPOは「『2人死んだから、現地の警察が動き出す』と言って、意識がもうろうとしている女性患者を無理やりホテルに戻した」と小沢さん。免疫抑制剤を投与し、感染症のリスクも高い術後患者を医療設備も整わないホテルに戻した。逃亡を図るかのような対応には恐怖を感じた。小沢さんの手術予定日を前に、医師は本国へ逃げてしまったという。

© 株式会社神奈川新聞社