経験値ゼロ、虫は苦手だけど…畑で見つけた新しい生き方 農家、黒瀬公雅さん

毎日欠かさず畑に通い、作物の生育具合をチェックする黒瀬公雅さん=福井県勝山市鹿谷町西遅羽口

 虫が苦手で、ミミズやカエルも触れない。「だけど、農業できますよって伝わればいいな」。作業着姿で苦笑いする黒瀬公雅(きみか)さん(28)=勝山市=は2年前、経験値ゼロから出発した。失敗を繰り返しながら学んだことは、毎日きちんと畑に通い作物に気を配ること。「当たり前のことをこつこつとやる。それが大事なんです」

 農業は天気との闘いと言われる。猛暑や豪雨などの異常気象は想定外の被害を招き、手塩にかけ育てた農産物を台無しにする。6月末は急激に気温が上がり、ナスに虫がわいて大打撃を受けた。大雪の年は「ビニールハウスが倒れないか心配で寝られず、真夜中に除雪してました」。

 苦労の連続だが「おいしかったと言ってもらえることが何よりもうれしいですね」。メロンに麻ひもを巻いて飾り付けて販売したり、ホームページのQRコード入りのミニチラシを同封したりと、自分なりにPR方法を工夫する。何をどう作り、どんな方法で販売するか-。「自分で自由に決められるのが農業の魅力」と話す。

 新型コロナウイルス禍の中、前職を辞めて新たな生き方を決断。県の新規就農研修機関「ふくい園芸カレッジ」で基礎を学んだ。仕事が軌道に乗れば雇用を増やし、産地化やブランド化につなげてにぎわいを創出、若者を呼び込む好循環を夢見る。

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 畑は中山間地にあるが、獣による被害はほとんどない。農業を始めてから、愛犬のアルバが畑やハウスの周りを見回るようになり「そのおかげかもしれないですね」。“お駄賃”はなんと野菜。「アル、おいで」。主人の声で駆け寄ると、トマトやキュウリに夢中でかぶりついた。黒瀬さんが作った野菜のおいしさを一番よく知っているようだ。

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