富士山はことし、3年ぶりに行動制限のない夏山シーズンを迎え、たくさんの登山客で賑わっています。一方で急増しているのが遭難です。登山者を安全を守る警察の山岳救助隊に密着しました。
<登山道での呼びかけ>
「検温はお済でしょうか」
「山の日」の富士山です。登山道には、山頂を目指す人たちで長い列ができていました。
<登山者>
「日本一の山に登りたいなと」
行動制限のない今年の夏山シーズン。富士山では、登山客が増えるとともに遭難事故も目立ってきました。
<静岡県警山岳遭難救助隊 渡邊浩行小隊長>
「九合目に待機し、パトロール中は山頂の小屋に立ち寄り、声掛けをしたりしている」
静岡県警の山岳遭難救助隊です。週末を中心に2人の隊員が標高およそ3500mの山小屋に寝泊まりして万一に備えています。
<登山道での呼びかけ>
「登山道を下りて欲しいので、九合目から登山道に戻れますか?」
「はい」
「お願いします」
登山者が歩いていたのは、「ブル道」と呼ばれる資材を運ぶための道です。
<静岡県警山岳遭難救助隊 山本健司隊員>
「人が歩く道ではないので、整備が行き届いているわけではないので、落石も多く危ない道」
登山道に異常がないかなど、様々な点を確認しながらパトロールするのも隊員の大切な任務です。
<登山道での呼びかけ>
「大丈夫ですか?」
山頂に近づくと倒れ込む人の姿が増えてきます。標高が高い場所で体内の酸素が不足することで起こる「高山病」です。
<登山道での呼びかけ>
「呼吸を意識するとすごく楽になる」
体調が悪そうな人には声をかけ、体内の酸素濃度を測り、水分補給や呼吸の仕方など対処方法についてアドバイスしています。隊員が声をかけた女の子は、その後、無事に体調が戻りました。
富士山頂です。この日も多くの登山客でにぎわっていました。登頂した人たちに話を聞くと、登る時に少なからず危険を感じたといいます。
<登山者>
「何回か落ちそうになった。良くないが(登山道の)ひもをつかんだ」
「かなり寒かったし、体温の面ではちょっと怖かった」
しかし、事故が起こりやすいのは、山頂にたどり着いたその後なんです。
<静岡県警山岳遭難救助隊 渡邊浩行小隊長>
「下山中に六合目・七合目付近で、足腰に力が入らなくる時に事故が起きている」
静岡県側では今シーズン8月11日までに、24件の遭難事故が起きていますが、そのうち22件が下山中です。
<静岡県警山岳遭難救助隊 渡邊浩行小隊長>
「色々な事案に遭遇してきたが、警察官として、人命救助、人を助けるという仕事には変わりない。訓練をして登って来れる隊員は限られているので、使命感を持ってやっている」
コロナ禍前のにぎわいを戻りつつある富士山。その裏には、山の安全を支える人たちの姿があることを忘れてはいけません。