6年間バッテリー「最強の2人」聖地に別れ 敦賀気比エースの上加世田頼希と女房役の渡辺優斗 夏の甲子園2022

敦賀気比―聖光学院 1回表聖光学院1死二塁、マウンドに集まる先発上加世田頼希と捕手渡辺優斗=甲子園

 【第104回全国高校野球選手権大会3回戦 敦賀気比1-8聖光学院】3回戦の試合前、福井県の敦賀気比のエース上加世田頼希は帽子に潜ませたメッセージカードを見た。「最強バッテリー!2人で1つ」。6年間バッテリーを組んできた渡辺優斗と福井大会前に同じ言葉を書いて交換し合ったものだ。

 「よし、やったろう」。上加世田はそう気持ちを高めた。しかし、1、2回戦と強豪を破ってきた聖光学院打線が早々に襲いかかる。

 一回、わずか9球で先制を許すと、三回にはスライダーが甘く入った。1死一塁から3番打者に右翼席へ運ばれた。「調子が良くなく、迷惑を掛けてしまった」。今大会最短の三回途中でマウンドを降りた。それでも五回、3番打者に打席が回ってきたところで再びマウンドへ。すると渡辺が駆け寄った。「思い切って投げてこい」。スライダーで右飛に打ち取り、一回に本塁打を放たれた雪辱を果たした。

 昨年のチームからメンバー入りしていた2人は、現チームになっても怒られることが特に多かったという。さらに今春の選抜大会では1回戦敗退。今大会は満足のいく投球はできなかったが、チームは2勝を挙げ「春の借りは返せた」と上加世田は話す。

 6年間の戦いを終え、女房役の渡辺は「すごいピッチャーとやれて良かった」と言い、上加世田も「渡辺がいなかったら今の自分はいない」と振り返る。

 試合後、ベンチ前で行うクールダウンのキャッチボールは上加世田が志願し、2人で行った。キャッチボールを終えると2人は涙を流しながら抱き合った。「最後まで胸を張って終わろう」(上加世田)。4季連続で足を踏み入れた聖地に別れを告げた。

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