「三川内山おくんち」を守りたい! 長崎国際大生が記憶プロジェクト

地域住民から「三川内山おくんち」に関する話を聞く学生たち=佐世保市、三川内山公民館(佐野准教授提供)

 長崎県佐世保市三川内山地区の伝統行事「三川内山おくんち」。地区では少子高齢化が進み、行事の継続が危ぶまれている。そうした中、長崎国際大(同市ハウステンボス町)の学生らが、記録を残したり、伝統文化の新しい形を模索したりする「おくんちの記憶プロジェクト」に取り組み始めた。
 関係者によると、三川内山おくんちは、古くから行われている菅原道真を祭神とする天満宮祭礼。地区を挙げて取り組む一大イベントだが、少子高齢化などの影響により、みこしの担ぎ手を確保するのが難しくなるなど、行事の継続が厳しくなってきている。2020年以降は新型コロナウイルスの影響で神事のみが行われており、今年の実施内容は現在検討中だ。
 プロジェクトは、同大人間社会学部国際観光学科、佐野香織准教授の研究とゼミ生の活動の一環。おくんちは、地域の人にとって身近な存在であるが故に、これまで写真撮影がされておらず、文書などの記録もほとんど無く、地域住民らの「記憶の中にしか残っていない」状況だという。
 そこで、佐野准教授は今年1月に同プロジェクトを立ち上げ、記録を残し、住民らと交流する中で新しい伝統の形を模索する活動を開始。佐野准教授らが制作する動画に3年生が地域住民へのインタビュアーとして参加したり、2年生が「三川内焼窯元はまぜん祭り」に足を運んで現地の空気を体感したりするなどしてきた。
 先月6日には、三川内山公民館で2年生9人が、インタビューを受けた住民ら6人と一緒に動画を鑑賞。その後の交流会で、若者が地域の外へ流れていること、住民以外の人が祭りに関わることに抵抗がある人もいること、みこしの担ぎ手が高齢化していることなどを聞き、地区の現状に理解を深めた。
 2年の石橋礼規(らいき)さん(19)は「住民の方たちから祭りへの熱意を感じる。どうすれば地域の人に寄り添い、くんちの再興などに貢献できるのか、今後も体験、対話をしながら考えたい」と話す。佐野准教授は「無形の文化財消滅への危惧は全国的な問題。どうやって伝統文化を守っていくのか、いろんな方と関わる中で新しい在り方の可能性を探りたい」と話した。

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