<南風>俳句ある日々

 2004年、還暦を迎えたのを機に本格的に俳句を始めた。1日1句を旨に毎日俳句を作っている。現役の経営者なので多忙ではあるが時間の融通はきく。所用などで出掛ける折など、目に留まるものがあれば、そこで車を降り、対象を絞り、五七五の韻律に季語を入れて5句ほどメモる。帰宅してから推敲を重ね得心の一句に仕上げる。

 ある冬の日、運玉森の山裾にある池田ダムに立ち寄った際、上空にハヤブサが旋回していた。見ていると、ゆったりと舞っていたが急降下してダムに突っ込んだかと思うと、かなり大きな魚をつかみ樹林の中に飛び去った。「隼(ハヤブサ)のしぶき一瞬魚?(つか)む」。胸を高鳴らせ、ハヤブサの瞬時の動きを捉えた一句である。

 「鯨(クジラ)の恋吾が乗る舟を揺らしけり」の句は「度肝を抜かれた、躍動感にあふれている」と評され全国俳句大会で秀逸賞を受賞した。

 八重山の小浜島に行き、ビーチで遊んだ。寄せ返す波の音に心が安らいだ。海潮音に耳を傾けていたら、「夏の浜地球のリズム聞こえます」の一句が自然に心に浮かんだ。天為副主宰の有馬ひろこ氏から「沖縄ならではの句、鋭い感覚」と評をいただき励みになった。

 初めて宮古島を妻と旅した時、サシバの群れが青々と澄み切った空を渡って行くのに遭遇した。何度も推敲した後、「瑠璃色の宮古の空や鷹(タカ)渡る」の写生の一句を得た。特選に選んでくれた小澤實氏(澤主宰)は「この世のものとは思えない美しい光景」との評を寄せてくれた。

 ともあれ、私にとって最も思いの深い一句は2016年、琉球新報主催の「平和のうた」シリーズの入選句「冬銀河地下に眠れる遺骨あり」である。社会面とコラム「金口木舌」でも紹介され反響を得た。わが心の平和希求の一句となった。この18年間、俳句はわが人生の良き伴侶となっている。

(澤田清、澤田英語学院会長 国連英検特A級)

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