破天荒な快挙

 唐の時代の中国。科挙(高等官吏の登用試験)の合格者がなかなか現れず、未開の地を意味する「天荒」と呼ばれた地域があった。しかし、ある年、ついに一人の若者が合格を果たし「天荒を破った」と称賛される▲「破天荒」はこの故事に由来する言葉で、本来の意味は〈誰も成し遂げられなかったことを初めて行うこと〉。「突拍子もない」はそこから派生した可能性が高いが「大胆・豪快・はちゃめちゃ」の意味で使われるのは、漢字のイメージに引きずられた誤用が次第に定着した-との説が有力だ▲夏の全国高校野球は宮城県代表の仙台育英高が初優勝を果たした。東北6県の代表校の優勝は春夏通じて初めて。関東との境をいう「白河の関」の地名を昨日は何度も聞いた▲東北勢の決勝進出は夏だけで10回目。第1回大会の準優勝校は秋田中だった。その先の長い悲願の道のりを誰が予想していただろう。近年は上位進出の常連校も多い▲仙台育英高は、どこのチームに入ってもエースナンバーを背負えそうな好投手5人を擁し、巧みな継投と力強い打撃で勝ち進んだ。深紅の大優勝旗が東北へ-▲冒頭に書いた通り「破天荒」はこんな時に使う言葉だ。でも、スマートな試合ぶりとのマッチングがしっくりこない。誤用恐るべし…と余計な感想も持つ。(智)


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