個人事業の経費の疑問「レシートで大丈夫?」「家賃は認められる?」税理士が回答

「大副業時代」が到来し、事業主となった方が直面する問題のひとつに「経費」があります。

「経費って、何あげていいかわからないし、帳簿なんてつけられませ〜ん」ですって?

お笑い芸人で税理士である税理士りーなが、簿記検定の勉強をしなくても帳簿がつけられるよう、経費の上げ方を解説していきます。


経費になるもの

まず経費をあげる場合、事前に必要になるのは経費を支払った時の領収書です。前提として「経費」と呼べるものは、起業や副業をした自分の事業として入ってきた売上(つまり収入)をゲットするために支払った費用です。「この経費を払ったから、この収入が得られたんだよ」と言えるものが経費に該当するということです。

領収書じゃなくてもOK

スーパーのレジで「これ経費にするから領収書ちょうだい」と言っている方を見かけますが、領収書ではなくレシートでも問題ありません。

  • 支払日
  • 支払い先
  • 金額
  • 内容

これらが記載されていれば、「確かにこの日に、この金額で払いましたね」と証明出来るので、帳簿に記載することで経費として売上から引くことができます。ですから、わざわざ領収書をもらわなくても、レシートがあれば経費にすることができます。

スーパーマーケットでレシートを領収書にしてもらったとしても、但し書きに「お品代」なんて書いたら、その内容が分からないので、かえって経費にすることが困難ということになります。むしろレシートの方がどんな商品を買ったか詳しく書かれていることが多いので、「お品代」と書かれた内容のわからない領収書よりも信憑性が高いですよね。

レシート・領収書がなくても認められるケース

この世の中の支払いにはレシートや領収書が発行されないものもあります。結婚式でお祝いを払ったり、お葬式で香典を払ったりした場合、会場で「領収書ください」なんて言えないですよね。結婚式やお葬式では、金額が書かれていないがそれ以外の「支払日・どこに払ったか・内容」が書かれたものがあるはずです。

例えば、結婚式の招待状や出席時にもらったカード、お葬式なら参列時に頂いたお礼状などです。この招待状やお礼状に、その時支払った金額を記入するだけで、領収書に記載すべき内容が出揃うことになりますね。

また、よく質問いただくのは「電車代・バス代」です。切符を買って電車に乗った場合は、改札を出る際に「領収書をください」と言うと回収されるべき切符に、使用済みのハンコを押して渡してくれるので、それを領収書として使用することができます。しかし、こんな人がいっぱいいたら、電車の改札口が領収書をもらいたい人でいっぱいになってしまって大変ですよね。

そこで登場するのが「出金伝票」というアイテムです。100円ショップなどにも売っていて、手軽に手に入れることができます。この出金伝票に乗車した日付と行き先、どんな交通経路で行ったのか、そして金額を明記することで、経費として認められることになります。ICカードで乗車した場合は、そのICカードの乗車履歴(利用履歴)を印刷することで、代用することができます。

他にもレシートや領収書が発行されないケースがあるかもしれませんが、初めに言った記載が必要な事項が書かれていれば大丈夫ですので、「日付・支払先・内容・金額」を意識して、領収書集めをしてみましょう。

プライベートとの按分(あんぶん)について

レシートなどを確認していると、事業をするうえで支払った経費と一緒に、事業主のプライベート用に購入したものが混在しているケースがあります。その場合は、プライベート分が経費に入ってしまわないよう、上手く分けていくことが必要です。

例えば、スーパーで食材や日用品を買ったついでに、仕事で使うノートやファイルも一緒に買ってしまった場合、「わーん、トイレットペーパーとか大根と一緒にノート買ってしもうた〜!」と言って、レシートをくしゃくしゃポイと捨ててしまうなんて、それこそ嘆かわしいですよ! わざわざレシートを分けてもらわなくても、「このレシートの中で事業用の経費はこれですよ」というのが分かるように、その項目に丸印をつけてください。それをするだけで、プライベート混在レシートがあっという間に事業用のレシートに早変わり、正しく経費を上げて帳簿をつけることができるのです。

では、自宅兼事務所の家賃や、仕事とプライベートの両方で使うスマホや電話料金などは、どうすれば経費として認められるのでしょうか? これも、仕事分とプライベート分を正しい割合で分けることで、経費の計上が認められます。この時重要なのは「客観的に認められる割合」で計算するということです。

家賃の場合は、自宅兼事務所の面積のうち、仕事で使っている部分の面積の割合。またそのスペースを1日のうちの半分はプライベートで使っていると言うのであれば、さらに半分という割合で按分計算します。50㎡の家10㎡を仕事に使っていて1日のうちの半分が仕事の利用である場合は、下記のように計算します。

(10㎡/50㎡) ÷ 2 = 1/10

つまり、1/10を事業用の家賃として経費にあげることができる、ということです。

携帯電話や固定電話の通信費の場合は、初めの1ヵ月でも構いませんので通話履歴を取ってみてください。仕事で使った時間とプライベートで使った時間を合計し、そのうち仕事で使った時間がどれくらいだったかという割合を出して、客観的に認められる割合として按分計算に使ってください。通話履歴をとることで、自分で適当に決めた割合ではなくて「客観的な割合」と言えるようになります。

家族と共用しているWi-Fiの利用料であれば、家族全員が1週間のうちどの時間帯にどのくらいWi-Fiを利用しているのか、スケジュールを確認して全員の利用時間のうち自分の事業用に使っている時間を利用割合として按分に使いましょう。

認められないケースも

このように、家賃や通信費も経費として計上することは可能ですが、経費として認められないものがあります。それは、自分が実質支払っていないものです。

例えば、妻がフリーランスで仕事をしていて夫が家賃を支払っている場合、妻は自宅兼事務所で仕事をしているとはいえ、自分が家賃を負担しているとは言えません。通信費も同様です。

支払っている名義が自分であれば自分の事業用として按分計算をして経費計上できますが、自分以外の家族が支出したものは経費計上しないように気をつけましょう。

減価償却

賃貸の場合は自宅兼事務所を按分計算で家賃の一部を経費にすることができますが、持ち家の場合はどうなるのでしょうか? 最近、自宅の一部を改装して一部屋丸々をお料理教室として使ったり、その他の事業用スペースとして使ったりする方も増えているようです。この場合は、減価償却という方法で経費の計上が可能になります。

減価償却とは、1年では絶対に使い切れないような固定資産と呼ばれるものを、耐用年数と呼ばれる「これぐらいの年数で使うんじゃないかな?」という期間で割って、少しずつ経費として上げていく方法です。耐用年数は資産の種類ごとで決まっていて、国税庁のウェブサイトに、「こんな資産だったら何年ですよ」という一覧表が掲載されています。その一覧表から耐用年数を調べて、固定資産の取得価額を年数で割ってさらに面積按分した金額を経費としてあげることが可能になります。

減価償却については細かいルールが色々とありますので、詳しくはまた別の機会にお話ししましょう。


経費の計上方法についてお伝えしてきましたが、これで不安なく経費の計上ができるのではないでしょうか?

プライベートも混ぜこぜで経費にあげていると、税務署にチェックを受けた時に「これは経費で認められません」といって怒られるだけではなく、高い利息分も追加の税金として取られてしまいます。正しい経費の計上方法を理解して、正確な数字で帳簿をつけましょう。

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