土曜は契約延長を祝うDJRのデイビソンが制覇。日曜は王者が貫禄の“ダブル”で逆襲/RSC第9戦

 8月19~21日にオーストラリアはメルボルン、サンダウンで争われたRSCレプコ・スーパーカー・チャンピオンシップの第9戦『Penrite Oil Sandown SuperSprint』は、名門シェルVパワー・レーシング所属のウィル・デイビソン(ディック・ジョンソン・レーシング/フォード・マスタング)が、土曜ポールポジション獲得からオープニングヒート完全制覇を飾り、会期直前に発表していたディック・ジョンソン・レーシングとの来季契約更改を自ら祝う勝利を収めた。

 一方、選手権首位を行くレッドブル・アンポル・レーシングの王者“SVG”ことシェーン-ヴァン・ギズバーゲン(トリプルエイト・レース・エンジニアリング/ホールデン・コモドアZB)は明けた日曜に逆襲し、レース2と3を制する貫禄の“ダブル”を達成。ランキングでのアドバンテージを500ポイントまで伸ばしてみせた。

 このサウンダウンの週末には、10月に控えたシリーズ最大の祭典『バサースト1000』を前に、レギュラーシートに座るドライバー陣とペアを組む“耐久カップ登録コドライバー”専用のプラクティスセッションが設定され、トップカテゴリー昇格を目論む新鋭のルーキーから、すでに複数回のシリーズ制覇を経験する“レジェンド”ドライバーらが、今季初の現行規定モデルをドライブした。

 そのセッションでは、昨季限りでフルタイムから退いた“セブン・タイムス・チャンピオン”ことジェイミー・ウインカップ(トリプルエイト・レース・エンジニアリング/ホールデン・コモドアZB)が、7冠王者の貫禄を見せつける最速タイムを刻み、その余波で今回はブラッド・ジョーンズ・レーシング(BJR)から出走することとなったマウントパノラマ“7勝”の3冠クレイグ・ラウンズは、同金曜にも来季2023年から導入の“Gen3”規定車両のテストも担当し、新型『シボレー・カマロZL1スーパーカー』の感触を「まるで昔のスーパーカーのようだった」と振り返り、ポジティブな評価を与えた。

「この最新のクルマを、サンダウンの勝手知ったるトラックで走らせると、そのフィーリングはまるで往年のスーパーカーのような雰囲気を漂わせているんだ。まずはそのことに何よりも驚いた」と語ったラウンズ。

「この“Gen3”カマロを速く走らせるには、ドライバーはかなり“ハッスル”して追い込まなければならない。今回はフロントセクションの改訂版仕様を試したみたいだが、固有のアンダーステアもオーバーステアも発生し、純粋な車両重量バランスと極端に削減された空力のせいで、タイヤはより酷使されることになる」と続けたラウンズ。

「ブレーキングの安定性は良好だし、バックストレートではスピードリミッターに当たりっぱなしだった。とても楽しめるクルマなのは間違いないね!」

 明けた土曜予選シュートアウトでは、計時予選でも最速を記録したデイビソンが再びタイムボードの最上位に躍り出たものの、ラップを開始するピットアウト時点でイエローラインカットの審議を言い渡され、ポール獲得が維持されるか神経質な待機に直面する事態に。

 しかし裁定は500ドルの罰金を課されたものの正式結果自体は「お咎めなし」となり、今季7度目の最前列スタートが確定。フロントロウに王者SVGが並び、セカンドロウに初代TCRオーストラリア王者のウィル・ブラウン(エレバス・モータースポーツ/ホールデン・コモドアZB)とアントン・デ・パスカーレ(ディック・ジョンソン・レーシング/フォード・マスタング)が並ぶグリッドとなった。

“耐久カップ登録コドライバー”専用のプラクティスセッションでは、昨季限りでフルタイムから退いた“セブン・タイムス・チャンピオン”ことジェイミー・ウインカップ(トリプルエイト・レース・エンジニアリング/ホールデン・コモドアZB/右)が最速に
来季2023年から導入の“Gen3”規定車両のテストでは、新型『シボレー・カマロZL1スーパーカー』のみリップとサスペンションの改訂版を導入した
今回はゼイン・ゴダードらとGen3車両のステアリングを握ったクレイグ・ラウンズ(左)「まるで往年のクルマのよう」だと評価した
土曜レース1では、ウィル・デイビソン(ディック・ジョンソン・レーシング/フォード・マスタング)が会期直前に発表していた来季契約更改を自ら祝う勝利を収めた

■レース2と3は王者SVGが両制覇。貫禄の“ダブル”を達成

 ライトが消えてターン1への飛び込みで首位を守ったデイビソンに対し、SVGは後方のブラウンに対するディフェンスを強いられる展開に。さらに後方ではレッドブル・アンポル・レーシングの新鋭ブロック・フィーニー(トリプルエイト・レース・エンジニアリング/ホールデン・コモドアZB)がターン9でアンドレ・ハイムガートナー(ブラッド・ジョーンズ・レーシング/ホールデン・コモドアZB)と接触し、7冠王者の後継者フィーニーは車列後方までドロップ。一方で前戦大破からの復帰戦だったハイムガートナーには15秒のタイム加算ペナルティが科されることに。

 中盤には4番手のパスカーレがアンダーカットを狙って早めに義務ピットへ向かったものの、しかし17周目にはSVGとブラウンが、18周目には首位を行くデイビソンが続けてピットエントリーに飛び込むと、いずれもパスカーレの前でトラックへ復帰することに成功。デイビソン、SVG、そしてブラウンを逆転したパスカーレの順で36周のチェッカーを受け、デイビソンは自身約13年ぶりとなるサウンダウンでの勝利を飾った。

「まさに夢のような走りだった。懸命にプッシュしていたから、今はとても良い気分だ」とバサースト通算2勝を誇るデイビソン。「無線ではレースを通じてチームのみんなに大声で叫び続けてしまった。この勝利は誰にとっても、新しい時代を始める素晴らしい方法だよ」

 明けた日曜はそのデイビソンとSVGが2日連続のレコード更新ラップでポールポジションを分け合うと、レース2で危なげなく首位発進を決めたSVGはチャズ・モスタート(ウォーキンショー・アンドレッティ・ユナイテッド/ホールデン・コモドアZB)やブラウンを従えて週末最初の勝利を手にする。

 続く最終ヒートのレース3でもSVGとデイビソンが早々に飛び出してすぐにパックを引き離し、2周目に早くも首位奪取に成功したSVGがデイビソンとフィーニーを従えて今季通算16勝目を飾り、この日の午前に達成したキャリア通算43回目のポールポジションを含め、伝説の男ラウンズに並ぶシーズン記録とした。

「最初の数周は重要だった。なんて素晴らしいバトルだったんだんだろう」と、余裕の表情で振り返ったキャリア通算70勝に到達したSVG。「アントン(・デ・パスカーレ)がダメージを負ってしまったのは残念であり、僕らだけで最後まで戦うことができなかった。それでもチームにダブル表彰台をもたらしたブロック(・フィーニー)にはおめでとうを言いたい。そしてデイビソンは週末を通して本当に速かった。昨日は彼について行ったが、彼は非常にうまくドライブしていた。だからこそ今日はミラーを見ずに、ただプッシュし続けたよ」と続けたチャンピオン。

 10月の『バサースト1000』を含め、残る5戦でスコット・マクラフランの持つ年間最多勝の“18”に挑む構図となったSVGだが、続くRSC第10戦は9月9~11日に今季限りでモータースポーツ開催地としての幕を降ろすと発表した隣国ニュージーランドの名物トラック、プケコヘパーク・レースウェイでのスーパースプリント戦が争われる。

日曜朝には電装系トラブルによる出火も経験したデイビソンだったが、挽回の2日連続ポールを獲得する
王者“SVG”ことシェーン-ヴァン・ギズバーゲン(トリプルエイト・レース・エンジニアリング/ホールデン・コモドアZB)がまずはレース2を先勝
最終ヒートでもSVGが今季通算16勝目を飾り、この日の午前に達成したキャリア通算43回目のポールを含め、伝説の男ラウンズに並ぶシーズン記録とした
レース3では2周目の最終コーナーでアクシデントが発生し、アントン・デ・パスカーレ(ディック・ジョンソン・レーシング/フォード・マスタング)が脱落

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