任天堂が実施する「株式分割」は個人投資家にどんな影響があるのか?

任天堂(7974)が10月1日(土)付で発行済普通株式を1株につき10株に株式分割することを発表しました。

株式分割というのは、文字通り1株の発行済株式を分割することをいいます。分割は1株を2株や3株などだけではなく、1.5倍など整数以外に分割するケースもあります。これは企業が決めることができるのですが、任天堂のように10株に分割するというのは最近では珍しいケースと言えると思います。

株式分割の手続きは取締役会決議で可能となっています。取締役会が非設置の場合は、株主総会の決議が必要です。任天堂の株式分割は、なんと1991年5月以来 31年ぶりとなります。

今回は任天堂を例に、この株式分割についてメリット・デメリットなども解説します。


そもそも「株式分割」とは?

個人投資家の方が身近な企業から株式投資を始めると言うパターンは少なくないと思います。

例えば普段使うコンビニ、銀行、スーパーマーケットなどの株式は、業容などがわかりやすくて投資しやすいと言う方もいらっしゃるでしょう。他に好きな製品を出している企業に投資を検討される方もいらっしゃるかと思います。

ゲームが好きな方にとっては、Nintendo Switchやスーパーマリオ、ゼルダの伝説などで有名な任天堂は、投資してみたい銘柄なのではないでしょうか? ただ、「よし、投資してみよう!」と株価を調べてみると、任天堂の株価は8月26日(金)の終値で5万7,640円です。購入する1単元は100株になるので、1単元あたり約580万円……かなりハードルの高い金額ですよね。資金規模の大きさから投資を敬遠する投資家もいる「値がさ株」といえます。

そこで今回の株主分割です。10月1日(土)付で1株につき10株に株式分割されることにより、1株あたりの株価が10分の1となります。先ほどの現在の株価のままでしたら、10月以降は任天堂に58万円ほどで投資ができることになるのです。

株式分割のメリット・デメリット

このように株式分割のメリットとしては、投資家が買いやすい値段となる事があります。企業の実質価値は変わらないのにその株を投資対象とする人が増える、つまり買いたい人が増えれば株価が上がる可能性があるでしょう。

逆に考えると、1株あたりの株価が高いということは流動性が阻害されている状態ともいえるので、適切な株価に分割で調節することで流動性も改善されると考えられます。そのため株式分割は買い材料であるといえます。

ただし、分割によって株価水準が下がるというのは、買いやすい株価になる反面、業績が成長しなければ株価が「低位株」の水準になってしまうリスクもあります。

ちなみに、日本取引所グループのウェブサイトを見ると「東証では、個人投資家が投資しやすい環境を整備するために、望ましい投資単位として5万円以上50万円未満という水準を明示しています」とのことで、「2022年3月末時点では、94.7%の会社が50万円未満」と表記しています。任天堂は東証の方針に沿うよう分割したと考えられそうです。

また株式を分割すると発行済株式数が増えるため、株式市場への上場や、株式市場での指定替えなどで求められる発行済株式数基準の要件を満たすことにも寄与する場合もあるでしょう。加えて株主優待を受けられる株主が増え、優待目当てでの長期投資や個人投資家が増加する期待もできますが、同時に株式増加による管理コスト、優待増加での負担も考えられます。

株式分割による既存株主への影響は?

それでは目線を変えて、例えばすでに任天堂の株主だったとしましょう。その場合、どのような影響が考えられるでしょうか?

今回の任天堂の株式分割は10分割なので、もともと100株保有していた場合は、分割前から10倍の1,000株になります。株価も10分の1になるので理論的には株式の価値は変わりません。

しかし分割後に株価が上昇すればもちろん、保有株の資産価値は増えます。前述したように、株式分割は買い材料であると考えられるので、確実とは言えませんが株価が上昇すれば既存の株主も恩恵を受けられるでしょう。

ちなみに、任天堂は与信管理サービスを提供するリスクモンスターが発表した「金持ち企業ランキング」で首位を獲得しています。これは2021年4月期決算以降の決算書に基づいて、企業の現預金から借入金などの有利子負債を差し引いた、実質的な手元資金であるネットキャッシュを比較したものとなっています。簡単に言うと企業の「金余り」の度合いを示す指標のひとつです。任天堂は有利子負債も0円、現預金でも1兆2,065億円と首位となっており、財務の安全性が最も高い企業であると言えるでしょう。

なお、これらは個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。皆さまが投資戦略を考える上で、情報集めの参考になれば幸いです。

8月22日週「相場の値動き」おさらい

8月26日(金)の日経平均株価は、前日比162円37銭高の2万8,641円38銭と続伸。前週8月19日(金)の日経平均株価は2万8,930円33銭でしたので、週間では288円95銭の下落となっています。

カンザスシティー連銀が主催するジャクソンホール年次シンポジウムでのパウエルFRB議長の講演を控え、様子見ムードのある1週間でしたね。タカ派な発言となるのかとの思惑で、短期的な利食い売りが出た模様です。米長期金利の値動きに株価が左右されたようにも見えます。

今週の経済指標は低調でした。

8月23日(火)に発表された8月PMI速報値は45と前月比で低下し、好不況の分かれ目となる50を下回って2年3カ月ぶりの低水準に。7月の米新築住宅販売件数も年率換算で12.6%減の51万1,000戸と、市場予想を下回り、2016年1月以来6年半ぶりの低水準となっています。

来週発表の米雇用統計にも注目です。

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