大雨災害で川濁り続けアユ釣りに打撃 福井県の漁協関係者「なすすべがない」、海水浴客の宿泊キャンセルも

濁った水が流れる日野川。アユ釣り客の姿は見られない=8月27日、福井県南越前町牧谷から撮影
河野海水浴場に注ぐ河野川(右)はいまだ濁り続けている=8月27日、福井県南越前町河野

 福井県南越前町を中心とした8月5日の記録的大雨の影響で、河川はいまだに茶色く濁った水が流れ、日野川のアユ釣りが打撃を受けている。遊漁券や友釣りに使うおとりアユの売り上げは例年の3分の1以下。漁協関係者は「シーズン本番のさなかに、これほど長期間濁り続けたことはない」と肩を落とす。同町河野地区では交通規制の影響などで海水浴客らの足が遠のき、民宿や旅館のキャンセルが相次いだ。

 南越前町から越前市、鯖江市にかけての日野川では毎年6月から11月末にかけ、県内外から多くのアユ釣りファンが訪れる。ハイシーズンは8、9月。今年は釣り客に長く楽しんでもらおうと、例年より3週間前倒しして6月4日に解禁し、アユも8月初旬には25センチ前後まで成長していたという。

 日野川漁協によると、大雨以降、アユ釣り客の姿は見られなくなった。佐々木武夫副組合長(75)は「7月の渇水を経て迎えたシーズン本番だった。遊漁券を買った人からおしかりの電話も入るが、これほどの濁流に対してはなすすべがない」。通常は大雨が降っても1週間内に濁りはなくなるが、今回は山間部や支流の鹿蒜(かひる)川から濁った水が流れ込み続けているという。さらに被災した河川改修工事の影響もあり、濁りがなくなる様子はない。

⇒【写真】海水浴場に注ぐ河野川、色の違いくっきり

 佐々木副組合長によると、濁りが多いと川の中に日光が届かず、餌となるコケが十分に育たないため、清流を好むアユ自体に影響が出ている可能性がある。「痩せて遊泳力が落ち、病気になりやすくなる。3週間も続くとどうなっているか分からない。えらに泥が入り込んで弱るケースもある。本来なら一番盛り上がる時期なのに残念」と話す。

 一方、河野地区沿岸部の旅館や民宿。大雨で北陸自動車道や国道8号など主要幹線道路が一時寸断されたこともあり、16日にかけて予約客の半数に当たる約200人からキャンセルがあった。

 同地区では3年ぶりに海開きをし、行動制限が伴わない夏の書き入れ時を迎えていた。三つの海水浴場のうちの一つ、河野海水浴場には河野川から大量の土砂と流木が流れ込み、受け入れられる状態ではなくなった。現在、海の濁りは薄まったものの、濁った川の水は注ぎ込み続けている。

 河野観光協会の小角譲事務局長(63)は「残念ながら今年の夏は終わった。カニシーズンに向けて気を取り直していきたい」と厳しい表情で話した。

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