副業でよくある勘違い、「会社にバレる」「青色申告できる」は本当なのか?

政府による働き方改革の推進などもあり、いま副業を考える方が増えています。しかし、「会社を作るのが大変そう……」など、副業について勘違いされている方も多く見受けられます。なんて……嘆かわしい!

お金や税金に関わるお話を楽しく綴っていきます、お笑い芸人で本当の税理士の税理士りーなです。今回は、副業によくある勘違いを正しく見直していきましょう。


そもそも開業について

開業と聞くと、「会社を作らないといけないんじゃないか?」なんて思っていませんか? 起業や副業で事業主として開業するというのは、法人を作らずとも個人で行うことが可能です。個人での開業が軌道に乗ってきて儲けが増えすぎた場合、法人を作って節税を考えるということもありますが、まずは個人で開業するのが一般的です。

事業主として開業するためには、開業届を税務署に紙で提出する方法と、「e-Tax」を利用してデータで提出する方法があります。

税務署に開業届を提出する場合、住所氏名と個人番号(マイナンバー)、開業日、業種と事業内容を記入します。開業日から1カ月以内に提出するのが基本ルールですが、1カ月を過ぎても受け付けてくれます。個人事業主の開業の手続きは、たったこれだけです、意外と簡単ですよね?

ただし、その際に「提出用」と「控用」の2部を用意して、「控用」は「受け付けました」の日付印を押してもらったら、必ず持ち帰るようにしましょう。開業届の控えは、自分が事業主であることの証明書になります。補助金の申請の際などに、開業届の控えの提出が必要なこともあります。大切に保管しておいてください。

なお、開業届を出すと「事業所得」というもうけの区分で計算することになりますが、給与収入がメインとなる方は副業となるため、収入金額300万円以下なら「雑所得」と取り扱われることになる、という変更がされるかもしれないことを覚えておいてください。

会社にバレる?

働き方改革で「会社員の大副業時代到来!」とはいえ、まだまだ副業を禁止している企業も少なくありません。また、認められていても会社に申請が必要で「副業始めたいけど、申請すると余裕があると思われて仕事増やされそうだから、会社には知られたくない……」と考える方もいるのではないでしょうか。

まず、開業届を出したからといって、それが会社に知られるということはありません。副業の収入があることで、会社にその内容が伝わるとすると「確定申告の内容」、つまり所得税を計算する上で集計した収入金額や、費用を差し引いた儲けの金額が知られてしまう可能性があります。

ただし、「(1)確定申告の内容をそのまま会社に知らせる」という方法と、「(2)確定申告の内容のうち給料にかかる部分のみは会社で処理をして、それ以外の部分は自分で計算する」のいずれかを、確定申告書を作成するときに設定できます。

まず所得税については、会社員の方は会社で1年分を年末調整して計算してくれています。その後、会社員の方が翌年3月15日締め切りの確定申告書を税務署に提出して所得税の申告を行ったとしても、申告を行った時点ではそれが会社に知られるということはありません。もし会社に確定申告の内容が知られるなら、翌年5月の住民税の申告書や納付書が会社に届いた時です。

所得税と住民税

所得税は国に納める国税で、会社員の場合は年末調整で会社が税務署で手続きをしてくれていますが、住んでいる地域(都道府県・市区町村)に収める住民税については、年末調整の内容や所得税の確定申告書の内容を使って、各市区町村で計算して納付書が送られてきます。

この住民税の計算について、前述の(2)の通り、給与の収入とその他の収支を分けて計算をしてくださいとお願いすることができます。それが所得税の確定申告書の「住民税」の記載欄です。

住民税の記載欄の中には、「給与、年金以外の所得にかかる住民税の徴収方法」という項目があり、「住民税の内容全部を会社にお任せします」と言うのであれば「A.特別徴収」に丸印を記入し、「住民税のうち給料分だけは会社に任せて納めてもらうけど、給料以外の分は自分で納付するので会社に知らせなくて大丈夫です」と言うのであれば「B.自分で納付」に丸印を記入すると、給料以外の収入については会社に送られる納付書から省いて、自宅に直送してくれることになります。

つまり、確定申告の時に「B.自分で納付」にグルグルグル〜と丸印を入れておけば、会社に通知はされないのです。

副業をはじめたらやるべきこと

さて開業届を提出して、副業を始める準備はできました。「開業届を出したからもう安心」ですって? なんて……嘆かわしい! 次にやることがまだあります。それは、年明けに行う所得税の確定申告に向けての準備です。

開業届を出した方は、事業主として事業所得があることになります。給与所得と違って、事業所得は自分で計算をしなければ誰も計算をしてくれる人はいません。つまり、事業主となった方は毎年必ず確定申告を行って、事業としての収入や支出が1年間でいくらあったのかを、税務署に申告する必要があります。

事業主は確定申告をする際に、収入と支出がどんな内容でいくらぐらいあったのかを一覧表にして、確定申告書に添付する必要があります。この一覧表を作る事で収入と支出の集計ができてもうけである所得が計算され確定申告書に記入する「所得」が分かるという流れです。この集計を行うための一覧表については、帳簿をきっちりつけているかどうかによって、2種類の集計表に分かれます。

きっちりと「複式簿記」という方法で帳簿をつけている人は「青色申告」と言って、確定申告書に添付する集計表は4ページ綴りの「青色決算書」と言う詳細な集計表となっています。月ごとの売上や仕入を記入が必要など、税務署への報告内容がやや多くなっています。

そこそこの帳簿ですよ、という人は「白色申告」と言って確定申告書に添付する集計表は2ページ綴りの「収支内訳書」という書類を作ることになります。そこそこの帳簿というのは、複式簿記とかまではわかっていなくても、日付と金額と内容はちゃんと書いていますよ、という程度の帳簿です。「白色申告だから帳簿つけなくて良いんだよね〜」なんて、昔の制度そのままで勘違いされている方がいるようですが、白色申告でも最低限の帳簿は要りますので注意してください。

ちなみに、「開業届を出していないので、私は白色申告ですか?」と聞かれることがありますが、開業届を提出していない方の副業での収入は「雑所得」となり、「事業所得」ではないので何色もありません。青色か白色かは「事業所得」のときのみです!

開業届と一緒に青色届けを!

キッチリ帳簿の青色申告を行う人は、税金を計算する上で税を安くする優遇措置があります。もうけから65万円を引いて税の計算をしてくれる、マイナス(赤字)のときは3年まで持ち越して儲かった時に引いてくれるなど、いろいろな優遇がありますので、詳しくは国税庁のウェブサイトをご確認ください。
※参照:国税庁ウェブサイト「No.2070 青色申告制度」

「ちゃんと開業届をだしたから『青色申告』だよね」ですって? なんて……嘆かわしい! その優遇を受けるためには、帳簿をつけて青色決算書を作る前に、事前にやっておかなければならない手続きがあります。それは青色申告の承認申請書を提出しておくことです。

提出期限は開業した日から2カ月以内で、うっかり過ぎてしまった場合はその年の青色申告はできなくなります。

なお、確定申告は毎年3月15日が締め切りとなっています。つまり、令和5年分の確定申告を「青色申告」で行いたい場合は、令和5年の3月15日までに申請を出さなければなりません。それを過ぎると、「令和5年分は白色申告で提出してね」ということになります。

青色届けは開業のタイミングで一緒に提出することもできます。「青色申告で始めるぞ!」という方は、開業日から2カ月以内に提出するように気をつけましょう。


副業に関する誤解は解けたでしょうか?

これから副業をしたいと検討している方や、すでに取り組んでいる方にとって、不安解消の一助になれば幸いです。正しい知識でできる節税もたくさんありますので、しっかりとお金や税の情報にアンテナを張って、自分に合った方法を見つけてくださいね。

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