7月に広島・江田島湾で22年ぶりに見つかったカブトガニのつがいです。カニ漁の網にかかりました。カブトガニは、環境省のレッドリストで絶滅の危機に瀕している種に指定されています。江田島湾では20年以上、生息状況の調査が続けられています。ことしは、ほかにも新たな発見がありました。
【写真を見る】カブトガニ 大量の “抜け殻” から分かること 広島・江田島湾で生息調査
ずらりと並べられているのは、カブトガニの抜け殻です。45個の抜け殻が7月に江田島湾の干潟で行われた2度の生息状況調査で見つかりました。
さとうみ科学館 平山 良太 さん
「これだけ見つかることで、ちゃんといるなというのが確認できましたので、とてもうれしかったですね」
江田島市の海洋生物を研究している「さとうみ科学館」は、江田島湾に住むカブトガニの生息状況を調査しています。
多くの抜け殻が見つかった干潟は、4年前から定点調査を続けています。この場所では去年までの3年間でおよそ160匹のカブトガニが確認されています。しかし、ことしはほとんど見つかっていませんでした。
平山 良太 さん
「見つからない日がけっこう続いていたので、どうしたのかなというふうに考えていたんですけど」
そんなときに見つかった大量の抜け殻…。詳しく調べると、去年、捕獲した個体の抜け殻もありました。
平山 良太 さん
「1年たって、しっかりえさを取って成長して、脱皮が無事にできたんだなということが、これでわかる」
この日も同じ干潟で調査が行われました。
平山 良太 さん
「あそこにいますよ。おそらく抜け殻だと思いますけど。抜け殻ですね、14齢ぐらいですかね」
抜け殻が6個見つかりましたが、カブトガニはいませんでした。
抜け殻はあるのに、なぜ、カブトガニはいないのでしょうか?
平山 良太 さん
「おそらくですね、この干潟では11齢(生後8年)ぐらいから沖で生活しているっぽいんですよね。脱皮するのに(干潟に)戻ってきて、また沖に戻る生活をしているみたいですね」
カブトガニは、成長すると、ふだんは水深の深いところで生活します。この干潟で確認されているカブトガニのほとんどはことし、11齢から12齢(生後8年から9年)になる個体です。
干潟で生活していた個体の多くが、ことしから生活場所を沖合に移したと、さとうみ科学館はみています。
しばらくはカブトガニを見つけることが難しくなりそうです。
平山 良太 さん
「今回、見つかった抜け殻の世代が成体になっていって、また産卵にこの干潟に戻ってきて、その子どもがまた大きくなってという形で周期的に見られる時期がまた来ると思いますけどね」
11齢から12齢の個体が、産卵できるおとなになるには5年ほどかかります。
そして、生まれたカブトガニが、人が見つけることができる手のひらほどの大きさに成長するには、さらに5年が必要です。
さとうみ科学館 平山 良太 さん
「こういう調査は、長いスパンをかけて地道に歩いて調査をしないと結果が分からないというか、1つのことも言えないので、気長に調査をしていくつもりですけどね」
調査の終わりに前回、捕獲したカブトガニを放流しました。
平山 良太 さん
「また来年、脱皮した姿が見れるといいですね」
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カブトガニが見つからないのは、「潮が満ちているときに脱皮して、沖に帰っているからではないか」とのことでした。カブトガニ自体が見つからなくても江田島湾で順調に成長していることが分かるということです。