乗り合い車両、地域の”足”に 南島原・西部で「チョイソコ」実証実験

住民から予約を受けて乗り合い運行する「チョイソコみなみしまばら」の車両=南島原市口之津港ターミナルビル駐車場

 長崎県南島原市や市社会福祉協議会などで構成する「市地域公共交通活性化協議会」は2日、同市西部の「加津佐、口之津両町」と「南有馬、北有馬両町」の二つのエリアで、予約を受けて乗り合い車両を運行する「デマンド交通」の導入に向け実証実験を始めた。地域の公共交通網を守るとともに、路線バスの代替手段としての可能性を探る。
 市がデマンド交通導入に乗り出すのは初めて。トヨタ自動車グループのアイシン精機(愛知県)が開発した地域交通システム「チョイソコ」を運用する。同システムの導入は島原、雲仙、五島各市に続き県内4自治体目。運行管理は長崎トヨペットが担い、タクシー事業者に運行を委託する。
 高齢者の免許返納後における移動手段確保などの理由から公共交通の重要性が高まっている。しかし、路線バス事業者の撤退や運転手不足により、多くの自治体で交通空白地帯が生まれている。
 南島原市は中山間地域が多く、高齢化率は4割を超える。島原鉄道(島原市)は5月、人口減少による利用者減少や車両の老朽化、運転手不足などに加え、新型コロナ禍に伴う経営悪化を踏まえ、南島原市内が起終点のバス2路線を9月末で廃止すると発表した。
 市地域づくり課によると、西部地区はバス停から遠い地域に住む高齢者が多く、通院や買い物の交通手段確保が課題となっている。
 こうした社会課題を解決すべく、月―金曜日(祝日を除く)の午前9時半~午後4時半、路線バス停留所、公共施設など両地区内計199カ所(8月31日現在)の乗降場所で自由に乗降できるデマンド交通「チョイソコみなみしまばら」(最大乗車人数は運転手含め5人)を各1台配置し、2024年3月まで運行する予定。総事業費は年間2300万円。
 会員登録し、コールセンター(電050.201.86999)か、ネットで予約する。運賃は片道300円(小学生は100円、未就学児は無料)。9月中は無料運行する。
 予約状況から最適の運行ルートを人工知能(AI)で導き出し、柔軟な予約運行のほか、CO2削減などによる環境負荷の低減にもつなげる。
 運行開始式は松本政博市長や市議らが出席して同市口之津町の市口之津港ターミナルビルであった。近くの70代無職男性は「近距離を待たずに乗られるのは助かるが、結局は通学や通院は島原市なので遠距離が多い。過疎地の“足”になれるかは両市の乗り合い交通の連携が不可欠」と話した。
 同課の田口享史さん(48)は「通院や買い物などの日常生活を支える新たな交通手段として、多くの人に利用していただきたい」と呼びかけている。問い合わせは同課(電0957.73.6631)。


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