小林可夢偉率いるトヨタWECチームとGR010ハイブリッドが富士に凱旋「この週末は特別なものになる」

 小林可夢偉と平川亮、ふたりの日本人ドライバーを擁するTOYOTA GAZOO Racingは、WEC世界耐久選手権の日本ラウンドとして9月9~11日に富士スピードウェイ開催される、2022年シーズン第5戦富士6時間レースで表彰台の頂点を目指す。

 今年から7号車のドライバーとチーム代表を兼任する可夢偉が率いているTOYOTA GAZOO Racing。ル・マン5連覇を成し遂げた現シリーズチャンピオンチームのハイパーカー『トヨタGR010ハイブリッド』は、展示イベントのために来日することはあったが、富士スピードウェイを含め日本のサーキットでレースをするのは今回が初めてとなる。

 富士でのWEC戦は、チームにとって単なるホームレースという以上の意味を持っている。なぜならトヨタGR010ハイブリッドに搭載されているハイブリッド・パワートレインは、富士スピードウェイにほど近いトヨタの東富士研究所で開発・製造されているためだ。また、この週末は東富士の多くのスタッフたちにとって、2021年にデビューしたGR010ハイブリッドがレースで戦う姿を初めて目にする機会となる。

 7月上旬に行われたイタリア戦、WECモンツァでシーズン後半戦に突入した今季のシリーズは、すでに4戦が終了済み。残すは第5戦富士と最終戦バーレーンの計2戦となっている。

 タイトル防衛を目指すTOYOTA GAZOO Racingは現在、マニュファクチャラー選手権でアルピーヌを15ポイントリードして首位に立つ。一方、ドライバー選手権では反対にリードを許しており、ル・マンウイナーとなった8号車のセバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー/平川亮組がランキング首位から10ポイント差の2位、姉妹車7号車のマイク・コンウェイ/可夢偉/ホセ-マリア・ロペス組は30ポイント差の同3位につけている。このためトヨタにとって週末の凱旋レースは、“ホームレース”であるとともに、激しい選手権争いのなかで落とせない一戦でもある。

霊峰富士の麓、富士スピードウェイで2019年以来、3年ぶりにWEC富士が開催される

 過去の成績を確認するとトヨタと富士スピードウェイの相性は抜群に良く、WEC参戦初年度の2012年から2014年にかけて3連覇を達成している。また、2016年からは4連覇中。3年ぶりの開催となる2022年は大会5連覇が懸かる。

 そんな今年のWEC富士は9日(金)から走行がスタートする。初日は各90分間のフリープラクティスが2回実施され、ここで予選や決勝に向けた準備や確認作業が行われることになる。10日(土)は60分のプラクティス3回目に続き、午後に決勝のグリッドを決める予選を実施。11日(日)に行われる6時間レースは日本時間11時にスタートが切られる予定だ。

 3年ぶりの凱旋レースで勝利を狙うTOYOTA GAZOO Racingドライバーたちのコメントは以下のとおり。

■7号車トヨタGR010ハイブリッド

●小林可夢偉(チーム代表兼ドライバー)

「日本のファンの皆さまの前で、やっと初めてGR010ハイブリッドが実際にレースを戦うところを見ていただけることになり、とても興奮しています。ここ数年WEC日本ラウンドがなかったのは残念でしたが、それだけにこの週末は特別なものになります」

「レースだけでなく、トヨタ自動車の仲間、特に東富士のGRパワトレ開発部のメンバー、そして、日本のパートナー関係者などチームにとってとても大切な皆さまとお会いできる機会でもあり、いつも支えてくださっている方々にお礼の言葉を届けたいと思っています」

「前戦モンツァでは速さが足りず、残念ながら勝利を逃してしまったので、さらに強くなって富士に挑む必要があります。もちろん、我々の目標はチームとして両タイトルを勝ち取ることですが、この週末の勝利も望んでいます。ハイパーカーのバトルは激化しており、レースはチャレンジングな混戦になるでしょうが、それがチームをより強くしてくれます。日本のファンの皆さまの前で、表彰台の中央に返り咲くべく全力を尽くします」

●マイク・コンウェイ

「モンツァでのレースから随分時間が経ったように感じるが、その間にリフレッシュして充分な準備とともに、残り2戦に立ち向かう。我々7号車にとってはこれまでのところ、ベストなシーズンとは言い難い状況だけど、全力でプッシュを続け、クリーンなレースで富士ではトップ争いをしたいと思っている」

「富士は我々のホームレースであり、これまでに多くの勝利を重ねてきたので、今年もその再現を願っているが、それが簡単でないことはモンツァで証明された。ハイパーカーの競争レベルはより厳しいものとなっており、何よりも8号車はいつも最強のライバルだ。日本のファンの皆さまに最高のレースを見てもらうべく、頑張るつもりだ」

●ホセ-マリア・ロペス

「また日本に行くことができるのをうれしく思う。レースをするのにも素晴らしい場所だし、何より日本の熱狂的なモータースポーツファンの皆と過ごすことができるのは最高なんだ。TOYOTA GAZOO Racingのホームである日本に、チームの一員として訪れることで、なかなかヨーロッパのレースには来るのが難しい日本の多くの仲間と会うことができる、特別なイベントでもある」

「富士は素晴らしいサーキットで、僕自身レースでの良い思い出がある。長いストレートを持つレイアウトは、高速性能に優れる我々のクルマに合っていると思うし、力強い戦いができる週末になると考えている」

第3戦ル・マン24時間で優勝した8号車トヨタGR010ハイブリッド(セバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー/平川亮)

■8号車トヨタGR010ハイブリッド

●セバスチャン・ブエミ

「富士は我々にとって特別なレースであり僕自身、幸運にも3勝を挙げているので、個人的にも相性の良いサーキットなんだ。当然チームにとってとても重要なレースであり、2019年以来のWEC戦ということもあって、ホームレースである富士では力強いレースをすることが重要だ」

「東富士の仲間はチームにとって大きな存在なので、彼らとふたたび会えるのも楽しみだし、彼らと好結果を祝えるよう全力を尽くすよ。今シーズン、ハイパーカーの競争は激しさを増しているので簡単ではないだろうけど、正しいセットアップを見出し、クリーンなレースを戦わなくてはならない」

●ブレンドン・ハートレー

「我々が2019年に勝利を挙げて以来、随分間が空いてしまっただけに、ようやく富士に戻れることに興奮を抑えきれないよ。熱狂的な日本のファンの皆はいつも独特の雰囲気を生み出してくれるし、何よりもTOYOTA GAZOO Racingにとってのホームイベントということで、本当に歓迎されていることを感じるんだ」

「富士は有名なロングストレートを持つコースなので、GR010ハイブリッドであの1.5kmのストレートを全開で、母国ファンの前で走るのは本当に素晴らしい気分になると思う」

「シーズンも残すところ2戦となるが、ドライバーズ選手権では首位を10ポイント差で追っているので、目標はその差を縮めることであり、勝利でそれが叶えられれば最高だね」

●平川亮

「富士ラウンドは私にとってWECで初めての母国開催レースであり、日本のファンの皆さまの前でレースをするのを本当に楽しみにしています。私自身はスーパーGTやスーパーフォーミュラ、それ以前のジュニア時代から数多く富士でレースを戦ってきていて、WECシリーズの他のどのサーキットよりも富士のことはよくわかっています」

「そして、何度も良いレースを戦い、今季もすでに勝利を挙げているので、今週末に向けては充分に準備ができていると感じています。シーズンは残り2戦となりますが、我々はドライバーズ、マニュファクチャラーズの両選手権でタイトルを争っており、富士でもプッシュを続けます。我々の目標は明確で、また勝つために、最大限の努力をするだけです」

© 株式会社三栄