国葬巡る岸田首相答弁準備に不安 新たな材料なく、官僚「火だるま」懸念 8日にも閉会中審査

 安倍晋三元首相の国葬を巡る国会閉会中審査が8日にも実施される。岸田文雄首相が衆参の議院運営委員会へ出席し質疑に応じる。週明け5日の政府内では想定される質問の洗い出しが始まった。答弁書の準備を割り振られる見通しの官僚の間から「ちゃんとした答弁を用意できるだろうか?」と不安が漏れている。

 官邸関係者によると、首相の国会答弁は秘書官が手分けして執筆し、ベースとなるデータをそろえたり事実確認などが省庁に割り振られる。自民党総裁として向けられた質問に対しては官邸と党本部が連携してまとめるという。

 通常は議員側の質問通告を踏まえ本格的な準備に入る。今回作業が前倒しとなっているのは「予想せずともコアな質問が推測できる状況」(自民党幹部)だからだ。いわく国葬については「費用総額はいくらか」「法的根拠はあるのか」。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を巡っては「安倍氏との関わりの調査の必要性はないのか」などだ。

 岸田首相は8月31日の記者会見で「説明に全力を尽くす」としたが、「費用総額の開示は国葬実施後」と明言するなど「ゼロ回答」(立憲民主党幹部)だ。いわば「新たな答弁を書くための材料が出てくる見込みがない状況」(警察庁関係者)。内閣府職員は「官邸なり総理なりから指示がない限り情報開示は進まない。このままだと会見と同内容の答弁書にとどまる」とし、「総理が同じような答弁を繰り返せば国民の批判をあおり火だるまだ」と懸念を隠さない。

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