造山古墳群 伝承や遺物を後世に 研究者ら 古老から聞き書き進める

聞き書きの内容を話し合う(右から)角谷、定広、安川の3氏

 古代吉備のシンボル、造山古墳群(岡山市北区新庄下、国史跡)にまつわる伝承や遺物を後世に残そうと、大学の研究者らが地元の古老への聞き書きを進めている。今は所在不明だが、かつて陪塚(ばいちょう)上にあったという石棺の話を聞き出し、住民が所有する埴輪(はにわ)なども確認した。今後の遺跡整備に向けた参考資料としても期待され、成果は年内にも冊子にまとめる予定。

 中心メンバーは清家章岡山大教授(55)=考古学=と、元関西大客員教授の角谷賢二さん(72)=岡山市出身。それぞれの研究チームで素粒子「ミューオン」を用いた造山古墳の内部探査を昨年から行っており、連携して始めた。安川満・同市埋蔵文化財センター所長(55)、定広好和・造山古墳蘇生会長(76)も協力する。

 4人は4月から手分けして地域に出向き、これまでに70代以上の10人近くにインタビューした。ある男性の証言では、陪塚の千足古墳の墳丘には以前、子どもサイズの石棺が置かれ、中には朱が混じった泥が入っていたという。一帯の民家には、古墳から運んだと伝わる巨大な庭石や円筒埴輪があることも分かった。

 取り組みの中では、歴史研究者だった三笠宮さま(2016年死去)が1960年に同古墳群を見学した際の写真も見つかった。出土品とみられる円筒埴輪に見入ったり、千足古墳の石室内にはしごで降り、内部を調べたりする様子が写っている。

 今後も聞き書きを行いつつ、民家に残る円筒埴輪の年代などを岡山大で分析する。

 インタビューや確認した遺物、写真は「造山古墳群伝承物語」として冊子にまとめる。一帯の古地図なども載せ、QRコードから高精細画像を見られるようにするという。

 清家教授は「伝承や遺物は遺跡を復元する重要な手掛かり。住民の代替わりなどで失われる前に記録する意義は大きい」、角谷さんは「住民が地元の宝に興味を持ち、守り伝える一助になれば」と話す。

千足古墳の石室内を見学する三笠宮さまの写真(定広好和会長提供)
清家章教授

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