岡山刑務所で感染拡大 作業中断も 集団生活で密、警備上換気難しく

新型コロナウイルスの流行「第7波」で感染者が相次ぐ岡山刑務所

 岡山刑務所(岡山市北区牟佐)で新型コロナウイルスの感染が相次いでいる。流行「第7波」が猛威を振るい始めた7月から8月末までの感染確認は職員も含めて100人を超え、今も収束に至っていない。懲役刑の受刑者に対する刑務作業が中断されるなど大きな影響が出ているが、警備上の問題から感染防止対策を徹底できない刑務所特有の事情があり、関係者は頭を悩ましている。

 同刑務所によると、新型コロナの感染確認は7月1日から8月末までで受刑者70人、職員34人。7月下旬に受刑者5人が感染するクラスター(感染集団)が起きてから急増した。ほとんどが軽症か無症状だが、同刑務所は長期刑の受刑者が多く、同じ敷地内の拘置所も含め被収容者596人のうち約4割が60代以上と重症化リスクもあるという。

 現在、感染者と濃厚接触者は受刑者が大勢いる建物とは別の棟にそれぞれ隔離する処置を実施。食事など世話をする職員も専属にしている。

 ただ、感染対策には限界が見える。もともと集団生活で密になりやすい上、ドアや窓を開けたままにするといった換気が難しい。アルコール消毒液はアルコール依存症の受刑者が飲む恐れがあり、パーティション(仕切り)も割れば鋭利な凶器になる恐れがあるとして、いずれも受刑者がいる場所には置いていない。

 ワクチン接種に関しても、住民票がどの自治体にあるか分からなかったり、住民票を移す手続きなどをしないまま失効していたりという受刑者もいて、十分進んでいないという。

 木工や金属製品を受注生産する刑務作業は7月中旬から中断。本来、懲役刑の受刑者に科される作業ができない問題に加え、製品の納期が間に合わないといった事態も起きている。「今後、感染が収束しても企業からの発注が減れば、刑務作業を続けていくこと自体に影響が出る」と岩河直弘総務部長は懸念する。

 法務省によると、高松、福岡刑務所ではそれぞれ1週間で120人以上の感染者が出るなど他の刑務所でも感染が相次いでいる。

 刑務所に詳しい慶応大の太田達也教授(刑事政策)は「受刑者は自ら感染を回避する行動を取ろうにも制限がある。高齢者が多ければ、なおさら感染対策を優先しなければならない」と指摘。「ワクチン接種を進めることが一つの有効な策。住民票の確認などで難しければ、刑務所がある自治体が接種できる仕組みづくりも検討すべきではないか」と話す。

© 株式会社山陽新聞社