渡辺一樹に聞く3日間過ごしたMotoGPパドックで感じたこと。アレックス・リンスの新たな発見/第14戦サンマリノGP

 9月2~4日、ミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリで2022年MotoGP第14戦サンマリノGPが開催され、渡辺一樹(チーム・スズキ・エクスター)が初めてMotoGPに参戦した。渡辺はミサノで3日間過ごしたが、初めてのMotoGPマシンやパドックでは新たな発見があった。

 ジョアン・ミルの代役でサンマリノGPに参戦した渡辺は、予選で23番グリッドを獲得。決勝では21位完走を果たし、多くの経験を積んだ。

 決勝においては、序盤に転倒を喫してレースに復帰したジャック・ミラー、マルコ・ベゼッチ、ファビオ・ディ・ジャンアントニオとも走る機会があった。また、最後には周回遅れとなったタイミングでトップ争いのフランセスコ・バニャイア、エネア・バスティアニーニの後ろに着いた。

 いずれもドゥカティのライダーであるが、そのデスモセディチGPの走らせ方の違いを感じたという。

2台のトップ争いと渡辺一樹(チーム・スズキ・エクスター)/2022MotoGP第14戦サンマリノGP 決勝

「そういう走り方なんだなって思う部分が大きかったです。しっかり突っ込んで、しっかり止めて、しっかり立ち上がるみたいなメリハリのある走り方のイメージがすごく強かったんで、やっぱり結構メーカーによって違うんだなというのは感じた部分ですね」

渡辺一樹(チーム・スズキ・エクスター)/2022MotoGP第14戦サンマリノGP 決勝

 また、渡辺はフロントにミディアムタイヤを選択したが、その他の全ライダーはハードタイヤを履いた。そのチョイスの違いについてはこう語った。

「ハードタイヤに関しては、バイクとタイヤを使いきれてないなかで、あえてそこにいく必要がないだろというと。左側の温度が非常に難しくなって、そういう意味でハードで走らなくて良かったなと思います」

「実際レースを走るなかで、ミディアムのフロントがすごく垂れてきた問題を感じたことはなかったので、いい判断だったとは思います。いわゆるメーカーによって走り方が変わるというのと、レースを終わった後に聞いたのは集団で走るとめちゃくちゃフロントの温度が上がるということです」

「単独で走るのと、集団で走るのとで(違いがあり)、レース後にアレックス(・リンス)のデータを見させてもらったんですけど、かなりそこ(温度)に関しては差があったので、その管理はすごく難しいよなと思いました」

アレックス・リンス(チーム・スズキ・エクスター)/2022MotoGP第14戦サンマリノGP

 また、走りだけではなく、パドックでも多くの発見があり、MotoGPライダーの過ごし方をチームメイトのアレックス・リンスから感じたという。

「アレックスは、部屋が隣(裏側)なんですけど、セッション前に必ずすごいハイテンポ、ハイテンションの曲が流れてきて(笑) セッションが進むごとに、だんだん本人もテンションが多分上がってるんだと思うんですけど、しまいには歌い出しているんですよ」

「なんか面白いなと思い、アレックスの本質を一番強く感じたのはそこかな(笑) MotoGPライダーはそうやって自分のテンションを作っていくんだなと思い興味深かったです。自分もレース前に音楽は聞いたりするんですけど、(アレックスは)超ノリノリで、多分踊ってるくらいのノリだと思います。たまに揺れる時もあったので(笑)」

「自分のテンション上げてレースに挑むっていうのも、MotoGPはすごく短い時間で集中力を発揮しなきゃいけないし、自分も同じですけど、当然ながら毎レース自分の人生がかかってる状態でレースをしているので、自分を上げていくっていうのは、勉強になりましたね」

渡辺一樹(チーム・スズキ・エクスター)/2022MotoGP第14戦サンマリノGP 初日

 また、チームスタッフやファンからの反応も興味深いものがあったようで、「自分がまるで超有名人なんじゃないかみたいな、勘違いしそうになるくらいの特別扱いでした」と渡辺は語った。

「(サインは)すごい頻繁に求められてびっくりしました。名前知ってる? ってちょっと聞きそうになるくらいでしたけど(笑) でも本当、MotoGPを走ってるライダーだっていうその立場のリスペクトが、めちゃくちゃ強いんだなというのは、すごく強く感じる部分もありました。自分のライダーとしての姿を見た時『おーっ』ってすごい驚いてくれるんですよ」

「やっぱりライダーって特別なものだし、特別な存在でなきゃいけないんだなっていうのを強く感じますね。メディアブリーフもですけど、外に対して発信する形っていうのが、すごくはっきりしてる感じがするんですね。砕ける形での露出じゃなくて、レーシングライダーのあるべき姿としてすごく発信をしているなというのを強く感じる部分がありました。いろんなことがライダーのためにある環境なんだと強く感じました」

「その感情を生み出してるのは普段の露出の仕方もあるだろうし、やっぱりここが特別な世界だからこそ、そういう空気感が生まれるんだろうなっていうのは強くありましたね。特別扱いしてくれるので、すごく幸せな時間でした」

渡辺一樹の取材中に登場したアレックス・リンス/2022MotoGP第14戦サンマリノGP 初日

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