「たびら昆虫自然園30周年」 高齢化進むボランティアガイド 後継者育成が園存続の鍵 平戸

昆虫を子どもの手に乗せ、観察の仕方などを解説するボランティアガイドの西澤さん=平戸市、たびら昆虫自然園

 今夏開園30周年を迎えた長崎県平戸市田平町のたびら昆虫自然園(今村武施設長)。「解説指導員の会」の会員(ボランティアガイド)が敷地面積約4.1ヘクタールの園内を来園者と歩き、自然の中で昆虫の生態を説明する。7月には入場30万人を突破するなど、そのコンセプトは色あせていない。課題は平均年齢70代半ばとなるガイドの高齢化。園を次世代に受け継ぐために、後継者の育成が急務だ。
 「目の前で手を壁のようにすると登っていくから。ほら、やってみて」-。夏休みのある日。園内でガイドのリーダー的存在、西澤正隆さん(68)が子どもたちを促した。カマキリが手をはう感触に歓声を上げ、目を輝かせて動きを追う子どもたち。「小さい虫は人間が『軽く』のつもりでつまむだけで、体がつぶれるほどに感じる。そっとね」と、西澤さんは触れ合いの基本を教える。

水生生物などが見ることができる観察池。来園者のほぼ全員が生き物との触れ合いを楽しむことができる主要観察スポット

 柵やガラス越しの観察が多い他の動植物園・昆虫園と異なり、たびら昆虫自然園は来園者が昆虫の居場所に入り込む。ガイドは木の陰や葉の裏などに導き、興味や関心に応じて昆虫の特徴や周りの植物との関わりを説明する。
 初代園長を務めた西澤さんによると、ガイド同行は当初は希望者だけ。しかし「虫が全然いない(見当たらない)」と“苦情”が相次ぎ、2年目からはほぼ全員に同行する。
 ガイドは、園オープン前後にあった指導員の講習会受講者が主体。現在は同市や佐世保、大村などの7人で、元教員が多い。現在は正規職員2人も加わる。
 来場者が増える夏休みや行楽シーズンは、昼食が取れない日があるほど多忙。高齢者には照り付ける日差しもこたえる。勇退の意向を示す人もいるが、西澤さんは「皆、かけがえのない人材。辞められては困るし『代わり』の育成は簡単ではない」と訴える。

長年、来園者を迎えてきた木製のゲートは老朽化のため、8月16日に撤去された。左奥は昆虫館

 ガイドは交通費などの費用弁済以外は手弁当だ。それでも続けるのは「解説案内を基に、昆虫と触れ合う個性的なサービスを続ける」という園の方針とガイドの心意気、来園者の笑顔だ。市はそれを尊重する一方、無償の活動へのこだわりが後継者育成・参入の壁にもなるとみる。
 打開策の模索も始めた。同園では昨夏、イベントの企画立案や運営を下支えする「昆虫クラブ」を設立。メンバーは昆虫愛好者ら30人で、うち1人がガイドにも興味を示しているという。
 市幹部の一人は「ガイドのノウハウを生かし、園内外で収益につなげる活動など、次世代の意欲を引き出す取り組みがほしい」と指摘。所管する同市田平支所の野口雅文支所長は「ガイドなしの園は考えられない。入園料にガイド料を加えた新たな料金体系があってもいい。年度内をめどに市の考え方をまとめ、園に示したい」と答えた。


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