旧統一教会との接点確認作業は「点検」 安倍氏追及への予防線? 「調査」との表現避けた岸田首相

衆院議院運営員会の閉会中審査で安倍元首相の国葬を巡り答弁する岸田首相=8日午後

 安倍晋三元首相を巡る8日の国会閉会中審査で、自民党総裁でもある岸田文雄首相は世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と同党との関係についても答弁した。同党国会議員の団体との接点確認作業について「点検」との説明で通し、「調査」との表現を避けた。安倍氏を対象外としたい思惑がのぞく。

 自民内の作業を巡っては茂木敏充幹事長も記者会見などで「議員それぞれの点検」と主張してきた。「点検」と表現することで「当事者の自発的な行為」に位置付け、ゆえに亡くなっている安倍氏は対象外と予防線を張り、追及の広がりを防ぐ意図がうかがえる。 

 衆院議院運営委員会での審査で立憲民主党の泉健太代表から「団体の活動に関わってきた安倍氏をなぜ調査対象に含めないのか」と問われた首相は「活動の当時のご本人の判断があったと思うが亡くなられており、実態把握には限界がある」と説明。「国会議員への点検結果を取りまとめ、党としての説明責任を果たす」とし、自党で行っているのは「調査」ではなく「点検」との認識を強調した。

 「岸田総理が『関係を断ち切る』とした団体と安倍氏は関係が深かった。そんな人物を国葬にするのは矛盾。自民との関係が切れるとも思えない」との共産党の塩川鉄也氏からの追及には「亡くなった方の実態把握は困難」と繰り返した。一方で、「しっかり点検を行う」と語気を強めて反論しつつ「各人の未来の活動へ向けた作業だ」と付言。未来なき物故者は対象外との見解を織り込み、さらに予防線を張った。

 続く参院議運委の審査では共産党の仁比聡平氏から「安倍氏の行動が団体の広告となり被害を生んだ。政府や自民党が資料などをたどり行動に至った経緯を調査すべきだ」と迫られたが「議員それぞれが過去を点検して説明するのが原則」と調査を重ねて否定。安倍氏に関しても「本人が亡くなったので十分に把握するのは難しい」と繰り返した。

 衆院では山口俊一議運委員長(自民)が旧統一教会関係の質問を「議題である国葬について聞いてほしい」と制する場面もあった。塩川氏らは議席から「当該人物の調査は国葬の根拠そのものではないか」などと反論。参院では立民の吉川沙織氏がやりとりを踏まえ「本来は(議題に拘束がない)予算委員会で行うべきだとわれわれは主張してきた」と苦言を呈した。

 「事の沈静化には『点検』で通すしかない」とする自民党幹部は「首相は答弁に気を使い、その点では隙が無かった」と振り返り、「後は世論次第だ」と祈るように話した。

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