閉会中審査

 いくら包んだら…? のっけからお金の話で申し訳ない。冠婚葬祭の祝儀や不祝儀の金額に真剣に悩んだ経験はないだろうか。相場は幾らくらいだろう、他の皆さんはどれぐらい…と▲「気持ちの問題だ」とはいうけれど、その祝意や弔意が数字で測られてしまうことが世の中には時々起きる。「丁寧に越したことはないか」と決断することもある。ただ、後で「ちょっと奮発し過ぎた」と考えても引っ込められない▲丁寧過ぎたか、と包み過ぎた香典を内心では悔いているのではないか-と想像するのは、例えが卑近に過ぎるだろうか。安倍晋三元首相の「国葬」を巡る国会の閉会中審査に臨んだ岸田文雄首相の答弁ぶりを見ながら考えた▲国葬の理由に挙げたのは、憲政史上最長の在任期間や各国から幅広く寄せられた弔意など4点。これまでの説明と何も変わっていない。それ以上の材料がないのだから、そう答え続けるほかない▲でも、焼き直しの説明をひたすら繰り返すことを「丁寧な説明」とは呼べまい。国葬の基準を問われてこう述べた。「時の内閣がその都度、適切に判断するもの」。今厳しく問われているのは、まさにその判断の当否だ▲世論の在りかを見誤っていたのだろう。だが、まさか今さら引っ込めるわけにもいかない。「葬」は難しい。(智)

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