岡山大の研究グループは、毒性が強く公害病「イタイイタイ病」の原因物質として知られるカドミウムが蓄積しにくい、新たなイネを開発した。海外品種とコシヒカリを交配した品種。研究を担った馬建鋒教授(植物栄養学)は「鍵は『重複遺伝子』で、他品種への応用も可能。安全性の高いコメ作りにつなげたい」としている。
カドミウムは土中などに存在し、食べ物や水を通じて人体に取り込まれる。日本人が摂取する量の4割以上はコメ由来とされる。
馬教授らは、カドミウムの蓄積が少ないインドの品種・ポッカリに着目。根を分析したところ、土の中にあるカドミウムやマンガンを取り込む遺伝子「Nramp5」が二つあることを突き止めた。他品種のほとんどは一つしかないという。
ポッカリとコシヒカリを交配した株に、さらにコシヒカリを4回かけ合わせて優良な株を選抜。コシヒカリの食味などを受け継ぎ、カドミウムが蓄積しにくい品種を作り出した。カドミウムが多い土壌で栽培したところ、その含有量はコシヒカリより6割ほど少なかったという。
光合成に必要なマンガンと有害なカドミウムの双方を運ぶ役割を担うNramp5の働きを阻害するとイネは生育不良になってしまう。グループではカドミウムの輸送だけを防ぐ技術研究を続けてきた。今回の成果は8月、科学誌ネイチャー・フード電子版に掲載された。