「トークン枠」での電撃入団!“アルゼンチン魂”を宿す関東1部エスペランサSC、三田野慧の挑戦

神奈川県横浜を拠点とするサッカークラブ「エスペランサSC」は、元アルゼンチン代表のホルヘ・アルベルト・オルテガ氏が2003年に創設した異色のクラブ。

クラブ名はスペイン語で“希望”を意味しており、2011年から活動するトップチームは現在、関東圏のトップディビジョンである関東1部リーグに参戦中。クラブとして、Jリーグ入りも視野に活動を続けている。

アルゼンチンサッカーを源流に持つクラブらしく、指導方法なども独特。

そこで、子供の頃からエスペランサに在籍し、日大藤沢高校と日本体育大学を経て、今シーズンから復帰した三田野慧にいろいろ聞いてみた。今回は“アルゼンチン流指導”などを紐解くインタビュー後編!

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「トークン枠」での加入

――すごくドラマチックな復帰ですね。「トークン枠」とは具体的にどういうものだったのですか?

『フィナンシェ』が発行しているトークンという、いわゆる株みたいなものがあります。

サッカーチームを応援するため、チームが発行しているトークンをサポーターの方々に買っていただいて、それを保有することで特典として限定企画などに参加できる。トークン保有者だけが見られるチャットルームや動画などもあります。

その中で、今回のセレクションをライブ配信し、トークンを1トークン以上持っている方が獲得してほしい選手に自由に投票できるという企画を行ったんです。その投票で当選した選手は上手い下手関係なく、エスペランサに加入しますと。

エスペランサ自体、サポーターや地域とのつながりを大切にしていこうというコンセプトのもとで作られたチームです。今回もそうしたサポーターの方に楽しんでいただく企画の一つで、言うなればアイドルの総選挙みたいな感じでした。

ライブ配信をするにあたって、自分はこういう選手ですと事前に動画を配信することになっていたので、「日体大の三田野慧です。ジュニアユースまで所属していたエスペランサに戻ってきました」みたいな感じで送りました。その時点でもう強いじゃないですか(笑)

挨拶動画とかを含め前評判が良くて、プレーでも持ち味を出せたことで実際にみんなが票も入れてくれて、ぶっちぎりで当選しました。トークン枠という形での入団はおそらく世界初ではないかなと思います。

アルゼンチン指導者

――セレクションをライブ配信して投票という形は面白いですね。とても新しい形の選手獲得です。さて、エスペランサと言えば、やはりホルヘ・アルベルト・オルテガさんを筆頭にアルゼンチン人指導者がいるのが特徴です。日本人指導者との違いはどんなところに感じますか?

そもそもサッカーという競技に対する考え方が違います。

どういうことかと言うと、アルゼンチンでは、国として皆サッカーをやっているんです。日本は数あるスポーツの中の一つがサッカーじゃないですか。サッカーに根付いているものがそもそも違うんですよね。

アルゼンチンでは小さい頃からテレビやラジオ、ゲームセンターやショッピングモールのテレビ、バーとかで流れる映像がずっとサッカーです。

家族の会話も全部サッカー。友達と遊ぶとしてもサッカー。そういうものなので、とにかくサッカーに対する考え方が違います。

その上、向こうの人はサッカーに限らず、絶対に負けちゃいけないんですよ。サッカーでも、すべての局面で負けを許さない。国民性なのかそういう捉え方をしています。

日本人は「負けても次頑張ればいい」とか「努力をしている人が素晴らしい」とか、どちらかと言うと綺麗ごとのような部分があったりします。。

でもアルゼンチン人は、別に努力も何もしなくてもいいから、負けなければOK、みたいな。そういったスタンスの部分が大きく違います。

――子供の頃からそういったサッカーに触れていると、高校や大学へ行った時、周りの選手たちと「違う」と感じる部分がかなりありました?

ありましたね。なぜそこで自分から突っ込まないんだろう、とか。そこに頭を出したら蹴られるかもしれないけど、ゴールを決められるかもしれないのに。

日本人はやっぱり引く人が結構いるんですよね。だけどアルゼンチンの人は、頭蓋骨を骨折してもいいから決める。そういったことをサッカーに対する根本的な姿勢として教わってきました。

球際の一つ一つや、サッカー選手になりたいという思い。「そもそもサッカーってこうじゃない?」という考えが周りのみんなと違ったのは、自分がエスペランサ出身だからなんだろうなと思います。想いとか気持ちとか、そういう部分です。

南葛SC戦

――少し前になりますが、エスペランサは関東1部リーグで南葛SCと対戦しました(※結果は2-2の引き分け)。相手には、元日本代表の今野泰幸選手や関口訓充選手などがいましたが、どうでしたか?

たしかに相手に今野選手がいました。ただ申し訳ないですが、「それが何?」という感じでしたね。

やっぱり、あくまで「以前日本代表だった選手」じゃないですか。日本代表だったというだけで、今は関東リーグの選手であることに変わりはありません。

日本代表だったからスゴイということではまったくないんだなと思いました。現日本代表と元日本代表は違うんだなと。

将来

――最後に、選手としてどのような未来を今描いているのか教えてください。

僕は、プロサッカー選手でありたいんです。

レベルの高いところでプロサッカー選手であれたらもちろん最高です。もちろんできるだけ高いレベルを目指すために自分を磨き続けるんですけど、そういうことよりもとにかく、サッカーでお金を稼ぐプロ選手でありたい。

今は100%、エスペランサに貢献し続けたいです。ただ将来的には、たとえば30歳手前になったら僕の憧れである海外でサッカー選手になりたいと思っています。

海外は日本とサッカーに対するお金のかかり方が違うので、日本よりレベルが低くても月25万円をもらい、家があって食事もついてきたりする。それはもうプロサッカー選手じゃないですか。

僕は今彼女がいるんですけど、その彼女と一緒に海外へ行って、ヨーロッパでプロサッカー選手としてのキャリアを歩みたいというイメージを持っています。

昨年末、エスペランサに決まりそうになったタイミングでは、海外でプロサッカー選手になることも考えていました。なろうと思えばなれたんです。

なれることは分かったので、怪我をしないことだけにとにかくこだわって、現役でいられる間は現役でやりたいです。

エスペランサでプレーして、コロナが落ち着いたりしたらヨーロッパへ行きプロサッカー選手になる。そして最後、再び選手としてエスペランサに戻ってこようと思っています。

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