WEC富士で2台のプジョー9X8を襲ったトラブルの真因判明「テストではなかったこと」と技術首脳

 WEC世界耐久選手権に参戦するプジョーのテクニカルディレクターは、第5戦富士6時間レースでウイングレスハイパーカー『プジョー9X8』に生じたメカニカルトラブルの原因について明かし、これがなければアルピーヌと表彰台争いができたはずだと述べている。

 ジェームス・ロシター/ロイック・デュバル/グスタボ・メネゼス組の94号車プジョー9X8は、5番グリッドから迎えた決勝で好調なスタートを切り、最初のピット作業では36号車アルピーヌA480・ギブソンをかわして3番手に浮上した。

 ロシターは第2スティントでアンドレ・ネグラオを抑えたが、次のピット作業ではノンハイブリッドLMP1マシンのアルピーヌがプジョーの前に再び出た。

 その後、94号車のリヤから煙を吐き、デュバルはマシンをガレージへと戻すこととなった。

 20分かけて94号車を修復した後、今後は93号車にも同様のトラブルが発生し、ガレージへ向かった。

 ハイパーカークラスはトヨタGAZOO Racingが終始レースを支配し、圧倒的なワン・ツー・フィニッシュ。2周おくれのアルピーヌが、3位表彰台を得た。

 プジョーのテクニカル・ディレクターであるオリビエ・ジャンソニーは「いい戦いができたと思う」と富士の決勝を振り返っている。

「問題が起きる前のペースは良かった。そして、レース終盤も常にいいペースだった。順位はほとんど決まっていたから、最後はバトルにはならなかった」

「我々にとっては、とても良いステップになった。レース運びを見ると、最初の2時間は、モンツァではまったくできなかった戦略的なレース・オペレーションをきちんとやろうとしていた。我々にとっては大きな前進だ」

WEC第5戦富士、決勝中にトラブル修復作業を行う94号車プジョー9X8

 ジャンソニーは、プジョーは富士でのラップタイム・パフォーマンスに満足していると付け加えた。

 レースでのファステストラップは、トヨタ7号車の1分30秒735。アルピーヌは1分30秒992、プジョー93号車は1分31秒115、94号車は1分31秒130というベストラップを記録している。

「アルピーヌと比較して、ペースは良かったと思う」とジャンソニーは振り返る。

「レースペースはとても良かった。でもまだ少し足りない。でもそれは、あのコースで学ばなければならないことのひとつであり、タイヤにかなり依存するものだ」

「レース中には、ライバルたちが別のタイヤ戦略を持っていることも分かった。もっと経験を積まなければならない。このコースを何度か走ったことがあれば、何らかのアドバンテージがあるものなんだ」

 プジョーの2台を一時ピットガレージに追いやり、表彰台を逃すことになった原因は、プラグの緩みによるオイル漏れだった。

 最初に94号車でこのトラブルに直面したプジョーのメカニックは、93号車の作業ではより短い作業時間でマシンをコースへと戻すことができた。その結果、93号車は94号車より8周少ない周回数でフィニッシュすることができている。

 また、93号車はベルニュがタイヤに苦しみ、ロシターから離されるという不安定なスタートとなったが、プジョーはその原因を調査することにしている。

「我々が知る限り、同じ問題だ」とジャンソニーはオイル漏れについて語った。

「もっと深く分析し、完全に理解できるようにしなければならない。劇的というほどのことではなかったが、結果はかなり大きいものとなった」

「テストでは見られなかった何かが、おそらくクルマにはあったのだろう。2台のマシンは同じように作られているから、ひとつ問題が起きると、別のクルマでもその問題が起きるものだ」

「モンツァで発生したような問題は出なかった。この週末の目標のひとつは、その問題を確実に解決することだった」

「いまは新しい課題を抱えることになったが、少なくともモンツァで発生した問題については、我々は前進している」

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