台風の困った置き土産、湖に水草のヒシ大量流入 ボート大会一部中止、シジミ悪影響も…福井県美浜町の久々子湖

福井県美浜町の久々子湖に流入し点在するヒシ=9月12日(美浜町提供)

 福井県美浜町の久々子湖で本来生息しない水草のヒシが大量に流入し、栃木国体を間近に控えたボート選手の練習を妨げている。町は回収作業を続けているが、追いつかない状況。9月上旬の台風の強風により、別の湖から入ってきたとみられる。ボート大会の一部日程が中止となる事態も起きている。

 ヒシは湖底に根を張り、水面にひし形の葉を広げる浮葉植物。淡水性で、三方五湖では主に三方湖で春から秋にかけて見られるという。生き物のすみかになる一方、繁殖すると船の航行が困難になるため、毎年地元漁師が刈り取っている。

 今年も三方湖では大量に繁殖した。ヒシが久々子湖で見られたのは、大型の台風11号が去った後の9月8日。強風で三方湖の湖底から根が離れ、水月湖、浦見川を漂い、久々子湖に入ったとみられる。

 全長1500メートルのボートコースを浮遊し浮標のブイに絡むため、町が翌日から回収作業を開始。選手や高校生らが練習を中断し手伝うこともあった。50年以上地元のボート競技に携わる田辺義郎・福井県ボート協会副会長も「ヒシが入ってくることは何度かあったが、こんな大規模な流入は初めて見た」と話す。10、11日に開くはずだった県高校新人大会は10日のみとなった。

 町は14日までほぼ毎日作業し、1メートル四方の土のう袋50個分以上を回収したが「まだまだ残っている」という。福井県嶺南振興局敦賀土木事務所は三方湖からこれ以上流出しないよう、汚濁防止膜を三方湖と水月湖の境に設置する対策を講じた。

 悪影響はボートにとどまらず、久々子湖に生息するヤマトシジミにも及びそうだ。同二州農林部によると、ヒシは9月末までに枯れて沈むが、分解されると湖底で貧酸素化が生じるという。シジミなどの底生生物が呼吸できず、死滅する可能性があるとし「今後、風の影響でシジミが生息する浅場にヒシが集中すると危ない。早く回収することが大事」とした。町は18日に再び回収する予定。

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