ゴルフ場の買収は成長に必要「アコーディア・ゴルフ」石井歓社長に聞く

石井歓アコーディア・ゴルフ社長

アコーディア・ゴルフ(東京都品川区)は2022年10月1日に、ネクスト・ゴルフ・マネジメント(同)を吸収合併する。オペレーションの統一による効率化を、合併の狙いにあげているが、効果はどうなのか。

また米投資会社のフォートレス・インベストメント・グループが、アコーディアとネクスト両社の親会社になって8カ月近くが立つ。当初、フォートレスの支援を得ながら成長を目指すと、していたが現状はどうなのか。

2022年6月30日にアコーディアの社長に就任した石井歓社長に、合併効果や親会社との連携などについてお聞きした。

合併は最後の仕上げ

―合併後、どの程度の効率化を見込んでいますか。

今回の合併は最後の仕上げになる。2019年に兄弟会社になってから実質的な統合作業を進めていたので、私が6月に入ってきた時には、同じところで仕事をしており、両社の区別がほとんどない状態だった。すでに予約システムや事業所の運営の仕方などを共通化してきていたため、10月になって急に何かが変わることはない。ただ、これまで別の会社だったため人事制度などは異なっている。この調整などが最後の作業となる。

-アコーディアは、133カ所のゴルフ場と25カ所のゴルフ練習場を運営しており、ネクスト・ゴルフ・マネジメントは37カ所のゴルフ場と2カ所ゴルフ練習場を運営しています。合併後は運営する施設数が国内最多となりますね。

これも合併したからと言って、何かが変わるものではない。連結で見ればすでに国内最多となっていたわけなので、特に新たな取り組みなどはない。

-ゴルフ場の買収を進めておられますが、今後もこの方針に変わりはありませんか。

企業価値を上げ、収益性を上げるためには企業が成長しなければならない。成長の要因には内部成長と外部成長がある。内部成長は売り上げを最大化しコストを下げて収益を上げていくということで、そのための努力は必要。でも、これだけでは大きく伸ばすことはできない。やはり外部成長、つまり新たにゴルフ場を買収することも必要だ。

-買収件数などの数字的な目標はありますか。

数字の目標は定めていない。なぜかというと、目標を達成するために無理して買収すると高値掴みしたりするためだ。投資効率がちゃんと上がることを前提にやるようにしている。

-どのようなゴルフ場を買われているのですか。

最近はゴルフ業界全体の調子が良いので、経営状況が思わしくないために売却するという事例は、あまりない。後継者不足や、コアビジネスへの集中のためにゴルフ事業を譲渡するなどのケースが多くなっている。三大都市圏にこだわらず、当社のスタイルで運営することによって収益改善が見込めるゴルフ場をしっかりと見極めていきたい。


女性ゴルファーを増やす

-フォートレスとの連携はどのような状況ですか。

フォートレスはハンズオン(投資先の経営に深く関与する手法)の投資会社なので、連絡を密にしながらやっている。どういう形で収益を上げていくのか、企業価値を上げていくのか、外部成長でどのくらい伸ばすのか、内部成長のために何をやるか、といったことについて話し合っている。まだ具体的ではないが、フォートレスはホテルやレストランを保有しているので、こうした施設との連携なども考えられる。

またアコーディアは、膨大なデータを持っており、これをどのように活用すれば一人ひとりの方に最適なサービスを提供でき、アコーディアファンになっていただけるのかを考えている。こうした検討の際にはフォートレスの力が必要となる。

-2022年4月にスタートした女性ゴルファー応援サービスなどは、その一例にあたるのでしょうか。

そうだが、そもそも現状はまだまだ女性ゴルファーが少ないのが問題で、アコーディアでも女性比率は平均で13%弱しかない。これを上げていかなければならない。そのためには女性ゴルファー応援サービスなどのような取り組みもさることながら、もっと基本的なところを改善していかなければならない。例えば残念ながら従来のクラブハウスは男性中心の作りになっている。これを女性が使いやすいように風呂やトイレの改修などに地道に取り組んでいく。コースについてもレディスティーの改修などを引き続きやっていかなければならない。

-コロナ禍の中、若いゴルファーが増えていますね。

ゴルフを始めたばかりの若い人たちに、ゴルフを続けてもらうためには、低価格でプレーできる機会を提供することが一番大事。若い人は土日の利用が多いので、土日でも低価格でプレーできるように、スループレーやハーフプレーなど幅広いプランを提供している。

-ところで、石井社長は日本政策投資銀行を皮切りに日本航空、福岡地所、日本ピストンリング、西日本新聞社、レオパレス21など多くの企業の経営に携わってこられました。この経験を、ゴルフ場運営にどのように活かされるお考えですか。

銀行時代にM&Aチームを率いていたし、ゴルフ場は不動産管理的な面もあるので、福岡地所での経験が活きる。もともと銀行員なので投資判断はできる、といった答えになるが、社長というのは、これとは別の話だろうと思っている。

社長一人では何もできない。戦略的には、現場が日々試行錯誤しながら行動することで生まれる戦略と、トップが大局的あるいは中長期的視点で下す戦略の二つがある。このボトムアップとトップダウンがうまく組み合わさって機能するように調整するのが社長の仕事だと考えている。

石井歓アコーディア・ゴルフ社長

【石井歓(いしい かん)氏の略歴】
1977年日本開発銀行(現 日本政策投資銀行)入行
1987年欧州共同体日本政府代表部専門調査員
2008年日本政策投資銀行常務執行役員
2010年日本航空管財人代理
2011年福岡地所代表取締役社長
2017年日本ピストンリング社外取締役
2018年西日本新聞社取締役
2019年事業構想大学院大学特任教授(現任)
2021年テラスマイル経営顧問(現任)
2022年レオパレス21社外取締役(現任)
2022年アコーディア・ゴルフ代表取締役社長CEO(現任)
1954年生まれ、東京都出身。

文:M&A Online編集部

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