「MotoGPアラゴンGPを現地で生観戦!夢が叶いました」/現役大学生ライダーのスペインよりGO!

 こんにちは! バイクが大好きな、スペイン留学中の大学生ライター、ウチノアミです。私は今回、9月18日にスペイン東部・アラゴン地方にあるモーターランド・アラゴンで開催された2022MotoGP第15戦アラゴンGPに行ってきました。“初”海外MotoGP観戦の不安とワクワクの様子や現地の盛り上がりをお届けしたいと思います♪

 それではアラゴンへ……その前に私の留学について紹介させてください。私のスペイン留学は2020年、大学2年生の時に行くことが決まっていたものの、コロナ禍により無期限延期になってしまいました。

 しかし今春頃、留学の話が動き出し、6月末に約2年の延期の末に渡航が叶いました。今は、バルセロナ自治大学の留学生向けのコースで勉強しています。

バイクが大好きな、スペイン留学中の大学生ライター、ウチノアミです。

 授業はスペイン語の授業をスペイン語で、それ以外に選択した写真(Digital Photography)と異文化コミュニケーション(Intercultural Communication)の授業を英語で受けています。

 生活はアメリカ人3人とシェアハウス、買い物はもちろんスペイン語。スペイン語と英語(/日本語)の切り替えと、授業の課題の量に苦労していますが、毎日が新鮮でとても楽しいです。

サン・パウ病院という世界遺産の病院の一角にある美しいキャンパスで勉強をしています。

 私の留学の目的はバイクレースの本場、スペインでバイクレースを学ぶこと。『トビタテ!留学JAPAN』という国の留学支援制度を使い、将来ジャーナリストになって日本のバイク業界を盛り上げるべく、スペインで勉強を進めています。

 バイクレースの観戦は留学の大事な要素のひとつ。スペインに来た時期は、ちょうどサマーブレイクに差し掛かるあたりで、なかなかレースに行けずにいましたが、9月〜10月は様々なレースがスペイン国内で開催されるので、この2カ月はあちこち飛び回る予定です!

 前置きが長くなりましたが、ここからが本番です! 今回のアラゴンGP観戦に行くのを決めたのは、その週の火曜日でした。

 チケットサイトを確認すると、まだ残りがあり、しかもそれを考えている間に、怪我や手術の影響で今シーズンのほとんどのレースを欠場していたマルク・マルケス選手の復帰の発表。これは行くしかない! と、大急ぎでチケットとホテル&レンタカーを予約しました。

 直前の決定だったので観戦は日曜日のみになりましたが、日帰りは厳しいと思って、土曜日の午後に出発して、サーキット付近のホテルに1泊することにしました。

 そして土曜日。昼過ぎにバルセロナの空港でレンタカーを借りることができました。クルマはトヨタC-HR。ヨーロッパでの“初”運転なので、AT車をチョイスしました。

レンタカーはトヨタC-HR。海外での運転は初めてなので、AT車を選択しました。

 スペインは日本と違い左ハンドル、右車線。少し不安でしたが、操作は日本で乗っていたクルマとほぼ同じで、空港からの道順も複雑ではないので、案外すぐ慣れました。

 ウインカー以外……(笑)。ウインカーがハンドルの左側にあったのですが、日本で染み付いた癖で右側のレバーを動かしてしまい、ウインカーではなくワイパーを動かしてしまう……ということを何回もやらかしました(汗)。

 バルセロナからアラゴンまでは、3分の1が高速道路、3分2がワインディングロードです。畑や風車、断崖やオレンジ色の岩肌など、アメリカのミュージックビデオに使われていそうな景色が広がっていて、バイクだったらもっと気持ちいいだろうな〜と思いながら、楽しく運転できました。

 道路も空いていて、予定よりも早めに到着できたので、急きょ、下見程度にサーキットに行ってみることにしました。

 アラゴンGPは駐車券の販売がなく、クルマもバイクも無料です。観戦エリアの近くに駐車場が点在していて、私がチケットを取った最終コーナーのスタンド席の近くにも広い駐車場がありました。おかげで駐車場からスタンドまで灼熱の中長い距離を歩く……なんてことはなく、徒歩3分ほどで観戦席まで到着できました!

駐車場の警備は馬に乗った警察官! かっこいい!!

 予選には間に合わなかったものの、観客席に着くと、ちょうどRed Bull Rookies Cupが始まったところでした。ヨーロッパでしか開催されないので、ルーキーズカップの生観戦ももちろん初めてです!

 MotoGPへの登竜門として開催されているこのレース、同じマシン、イコールコンディションでのレースなので、現地で見ていると余計にライダーの見分けがつきません(笑)。

 ですが、観戦席の正面に設置されている大きなスクリーンにレース映像が映し出されるので、心配はいらず、レース展開もよくわかりました。

MotoGPアラゴンGP併催のRed Bull Rookies Cup。MotoGPへの登竜門的なレースで、全員が同じマシンで戦います。

 ルーキーズカップを見ていたら、観客席の後ろの方から大歓声が。何かと思って向かってみると、なんとFAN ZONEというステージでライダートークショーが始まっていました。

 スタンドに向かう前、ステージの周りに人だかりができていて少し気になったものの、とりあえず観客席に行こうとスルーしていたのですが……。下調べをほぼせずに来たので、自分の客席の近くにステージがあることも、そこで土曜の午後にトークショーがあることも事前にまったく把握していませんでしたが、来た時間も、取った席のエリアもとてもラッキーでした!

 トークショーを観に向かった時ステージに立っていたのはレプソル・ホンダ・チームのマルク・マルケス選手、ポル・エスパルガロ選手と、LCRホンダ・カストロールのアレックス・マルケス選手。

 大歓声の理由は今回が長い休養期間明けの復帰戦、そしてホームグランプリとなるマルク・マルケス選手でした。怪我やリハビリに関する質問ににこやかに答えた後、ステージを降りてファンサービスをしていました。また、3人とも最高峰クラスを兄弟で走っていることもあり、兄弟に関する質問も出ていました。

ホンダのライダーのトークショー。復帰戦のマルク・マルケス選手の登場に、会場は大盛り上がりでした。

 ホンダのライダーの後は、ドゥカティ・プラマック・レーシングのヨハン・ザルコ選手とホルヘ・マルティン選手。ザルコ選手が流暢なスペイン語でインタビューに答えていて驚きました。

 その後テック3KTMのラウル・フェルナンデス選手、Moto3クラス・GASGASアスパーチームのセルヒオ・ガルシア選手、Moto2クラス・スピードアップのアロンソ・ロペス選手とフェルミン・アルデゲル選手、Moto2クラス・レッドブルKTMアジョのペドロ・アコスタ選手、Moto3クラス・GASGASアスパーチームのイサン・ゲバラ選手と、各クラスで活躍しているスペイン人ライダーが続きます。

 質問内容はレースやシーズンについての他に、決勝日の朝のルーティンなど。中量級・低量級クラスの若いライダーもMotoGPライダーと同じように人気が高いためか、ファン対応も慣れていてスター性を感じました。

 ラスト2組はMotoGPライダーに戻り、ファビオ・クアルタラロ選手、そして最後はアプリリア・レーシングのアレイシ・エスパルガロ選手とマーベリック・ビニャーレス選手。

 クアルタラロ選手は予選で少し苦戦した後だったので少しご機嫌ななめでしたが、ペラペラのスペイン語で、そして案外多かったフランス人のファンのためにフランス語でインタビューに答えていました。アプリリアのふたりは、地元ライダーということもあり、トリにふさわしい盛り上がりでした。

2021MotoGPチャンピオンのファビオ・クアルタラロ選手。

 トークショーはすべてスペイン語でしたが、私にも理解できる部分が意外と多く、楽しんで話を聞くことができました!

 夕方6時半ごろにトークショーが終わり、ホテルに向かいます。アラゴンのサーキットは周りに何もないド田舎にあるので(日本GPが開催されるモビリティリゾートもてぎよりも田舎にあります)、サーキット付近には、ほぼホテルがありません。

 観戦決定がギリギリ過ぎてサーキットの周りの街のホテルはすべて予約で埋まっていたため、クルマで1時間ほどの距離の山の中にあるとても小さな町のホテルに泊まりました。

 ホテルは田舎町の寂れたホテルという感じで、マスターも英語をまったく話せませんが、部屋は綺麗で、エアコン完備、シャワーもしっかりお湯が出て(ヨーロッパではそうでないことも多いのです)、ご飯もとてもおいしかったです。8時ごろにホテルに到着し、夜ご飯を食べ、シャワーを浴びて、翌日に備えて早めに就寝しました。

山道の途中に突如として現れた、小さな町のホテルに宿泊しました。

 翌朝は早くホテルを出発してウォームアップ走行からしっかり見るぞ! と思っていたのですが、宿のチェックアウトが8時以降でないとできないと言われてしまったので、のんびり7時に起床し、8時にチェックアウトしてサーキットに向かいます。

 サーキットまで1時間ドライブ。サーキット付近は渋滞していていましたが、MotoGPのウォームアップ走行が始まるタイミングで観客席に到着できました。

 2019年の日本GP以来3年ぶりのMotoGP。カラフルなマシン、エンジンのサウンド、朝から鋭く速いコーナリングを見せるライダーたち、そしてお気に入りのライダーを応援するたくさんの観客。久々のこの空気、雰囲気にワクワクが止まりません!

目の前のビッグスクリーンと聞き取りやすい実況のおかげで、現地にいても情報に困ることはありませんでした。

 決勝日の朝のアラゴンは曇り空で肌寒く、上に一枚軽く羽織ってちょうどいいくらいの気温でした。朝は路面も冷えていたようで、ウォームアップ走行はタイヤの冷えで転倒するライダーもいました。

 10時にMotoGPクラスのウォームアップ走行が終わった後、11時にMoto3クラスのレースが始まります。間に少し時間があったので観戦エリアを散策へ。

 観戦エリアはコースの周りに点在していて、グッズショップも食べ物の露店も各エリアにあるので、観戦は基本的に自分のいるエリアだけで完結します。

 食べ物のお店は大きなテントがひとつだけで日本GPほど種類はありませんが、ピザやサンドウィッチ、軽食、アルコールを含む各種飲み物に加えてアイスのお店も出ているので、飲食に困ることはありませんでした。

レースの合間に食べたアイスがとっても美味しかったです♪ 暑かったのでアイス売り場には列ができていました。

 グッズショップは、私のいたエリアにはMotoGPグッズオフィシャルショップ、アラゴンGPオリジナルグッズショップの他にKTMとスズキがメーカーブースを出店していました。

観戦エリアごとにグッズ売り場が設置されています。

 ライダーグッズはマルケス兄弟、クアルタラロ選手、ザルコ選手、エネア・バスティアニーニ選手、マルティン選手のものが販売されていて、そこにホンダとドゥカティのグッズも少し混ざっている感じ。

 そしてツナギメーカーのIXONがコンテナ型のグッズ売り場を展開していて、そこで中上貴晶選手やアレイシ・エスパルガロ選手などIXON契約ライダーのグッズ、そしてアプリリアやプラマックなどのチームグッズを販売していました。

IXONグッズショップ。コンテナの中にはライダーやチームのTシャツやキャップがずらりと並んでいます。

 グッズ売り場を見ていたらMotoGPオリジナルTシャツにかわいいものがあったので購入!20ユーロ(日本円で3000円弱)、早速お気に入りになりました。他にもファビオ・クアルタラロ選手のキャップにひと目惚れしたので購入。このキャップは、午後のきつい日差しを避けるのにとても役立ちました。

現地で購入したグッズを身につけて、観戦の準備はバッチリです!

 トイレはすべて仮設ですが、観客席のすぐ裏に十分な数があったため、トイレが遠い、トイレに行列……などの問題は一切ありませんでした。

トイレの近さ、個数は現地観戦においてかなり重要なポイントです。

 また、今回観戦場所として選んだ最終コーナーのスタンド席は、最終コーナーの侵入から立ち上がり、メインストレートまでが見えるポイント。この最終コーナーでのバトルが見られるほか、コーナーから立ち上がっていくライダー後ろ姿がとてもかっこよく、見どころ満載のエリアでした。

最終コーナー立ち上がりからメインストレートにかけて。

 さてレース。Moto3クラスは、ハスクバーナの佐々木歩夢選手が素晴らしい速さを見せて2位表彰台を獲得! ヨーロッパの地で同年代の日本人(佐々木選手は2000年生まれの同い年ライダーです!)の活躍を生で見ることができてとても嬉しく、大きな刺激になりました。ですがそれを上回る速さを見せたのがゲバラ選手。スペイン人ライダーの活躍に、観客席が沸いていました。

Moto3クラス決勝で2位を獲得した佐々木歩夢選手。日の丸を掲げてウィニングラン!

 感動したのは、ゴール時やバトル時はもちろんのこと、転倒した後リスタートをして後方を走っていたライダーに対しても、客席から拍手が沸き起こっていたこと。今回残念ながら序盤に転倒してしまい、最終的にはリタイアとなってしまった山中琉聖選手にも温かい拍手が送られており、ライダーへのリスペクトと優しさを感じました。

 Moto2では昨年のMoto3クラスチャンピオン、アコスタ選手が優勝し、2位にアロン・カネト選手、3位にアウグスト・フェルナンデス選手とスペイン人が表彰台を独占。Moto3クラスに引き続きスペイン人ライダーの大健闘に、観客の熱気もとても高まっていました。

 そして佐々木選手と同じく同世代の日本人ライダー、小椋藍選手は最後にトニー・アルボリーノ選手とのバトルに競り勝ち4位。最終ラップ、最終コーナーでアルボリーノ選手に抜かれかけたところをクロスラインで抜き返す瞬間を目の前で見ることができて大興奮しました。

最終ラップの最終コーナーでの4位争い。小椋藍選手がクロスラインで順位を守りました!

 今回、渡航前に桶川スポーツランドのウェブショップで購入した小椋選手の応援フラッグを持っていったので、サイティングラップとチェッカー後にスタンドで旗を掲げていました(レース中はフラッグどころではなく……笑)。日本GPではこのフラッグを振る方がたくさんいると思うので、その様子を見るのを楽しみにしています。

小椋藍選手の応援フラッグをフリフリして応援しました!

 最後はMotoGPクラス。クアルタラロ選手、マルケス選手、中上選手が転倒するという波乱の、そして個人的には大ショックな幕開けでしたが、その後中盤はレース展開に大きな動きがなかったためか、結構な数の観客が途中退席していました。

 最後の最後でスタートからトップをキープしていたフランセスコ・バニャイヤ選手をバスティアニーニ選手がパスしてそのまま優勝! 最後まで見ていてよかったです(笑)。

 チェッカー後のウィニングラップでは、各クラス何人かのライダーがコースを外れて手を振りに観客席の近くまで来てくれたり、ウイリーを披露したりしてくれ、観客もライダーを讃えてスタンディングオベーション。現地観戦ならではのこの雰囲気、最高でした!

チェッカー後のライダーたちを観客総立ちで温かい拍手で迎えます。

 ちなみに、私が見た範囲だと、現地にいたMotoGPファンで一番多かったのがマルク・マルケス選手のファン。次いでクアルタラロ選手ファン、まだまだ根強いバレンティーノ・ロッシ選手のファン。エスパルガロ選手やリンス選手など地元スペイン人ライダーのファンも多く、みんな推しのグッズを身に付けたり旗を振ったり、思い思いに応援を楽しんでいました。

観戦エリアで見つけたレースファンの女の子。マシンを縫い付けた可愛いキャップでマルケス選手を応援していました。

 MotoGPのレースを終え、Red Bull Rookies Cupまで見てから帰ろうかとも考えましたが、翌日月曜日は1限から授業があったため、早めに帰宅することにしました。

 サーキット出口周辺や最後の高速道路で多少渋滞はあったものの、帰り道もおおむね順調で、途中休憩を挟んで7時半には空港でレンタカーを返却、8時半には帰宅することができました!

サーキット出口の渋滞。全員がMotoGPファンだと考えるとワクワクしますね!

 今回のアラゴンGP、初海外MotoGP観戦、しかも決定が急遽で準備もあまりせずに行ったので不安もありましたが、トラブルは一切なく、最初から最後まで、とても楽しい旅行になりました。

 MotoGPはこの後日本、タイ、オーストラリア、マレーシアと、アジア・パシフィックラウンドに入りますね! 私はこの後SBK、ヨーロピアンタレントカップ、ESBK(スペイン国内選手権)などを回ります。その後、11月頭にMotoGP最終戦バレンシアGPを観戦予定です。

 それでは皆様、MotoGP日本GPを楽しんでくださいね! 
 ¡Gracias, y hasta pronto!

© 株式会社三栄