コロナ禍、増える食品提供 栃木県内フードバンク 利用者幅広く、在庫不足も

寄贈された食品の賞味期限などを確認するフードバンクうつのみやの担当者=9月上旬、宇都宮市塙田2丁目

 新型コロナ禍が長期化する中、生活困窮者などに食品を無償提供する「フードバンク」の需要が高まり続けている。NPO法人「フードバンクうつのみや」では本年度、8月末までの食品提供数が昨年同期比3割増のペースで推移する。利用の背景にある問題も複雑化しており、栃木県内の各団体は、ためらわずに利用、生活相談することや、提供する食品の寄贈、活動資金の寄付を呼びかけている。

 16日午前、「うつのみや」の事務所。「息子がたくさん食べるので食品を少し多めにほしい」と求める宇都宮市、50代男性に、担当者が申し訳なさそうに在庫不足を伝えた。男性は「親身に話を聞いてくれて本当に助かる。生活が落ち着いたら恩返ししたい」と話す。

 「うつのみや」の食品提供数は、コロナ禍前の18年度の681回、19年度の841回から、20年度は1294回、21年度は1658回に増加した。22年度は、家庭での食費が増える夏休み期間の7月だけで207回に上り、既に前年同期を約200回上回っている。

 女性の利用割合も、18年度の3割から本年度は4割に。20代以下の若者から子育て世代、年金生活者まで幅広い年代で増えている。交流サイト(SNS)や行政窓口などを通じ利用が周知されているという。

 「うつのみや」理事で社会福祉士の小澤勇治(おざわゆうじ)さん(65)は「コロナ禍で困窮者を支援しようという人が増えている以上に、ニーズが増している。複数回利用する人も多く、生活を上向かせるのに厳しい状況」とみる。

 「フードバンクあしかが」の高沢友佳里(たかざわゆかり)代表(51)も「利用増に加え、貧困の理由が複雑化している」と指摘。複数の課題が絡む家庭や独りで問題を抱え込む男性が多く、支援の長期化につながっている。

 「フードバンクもおか」ではここ1カ月ほど、食品提供の依頼が減っているが、周知を兼ねた食品配布会には多くの人が訪れる。石田昌義(いしだまさよし)代表(70)は「本当に困らないとSOSを出しにくいのではないか。遠慮なく声を上げてほしい」と呼びかけている。

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