アントニオ猪木さんが患った難病 「全身性アミロイドーシス」とは 長崎国際大・安東学長に聞く

安東由喜雄学長

 1日に亡くなった元人気プロレスラーで、参院議員を務めたアントニオ猪木さん(享年79)は「全身性アミロイドーシス」を患っていた。厚生労働省指定の難病であるアミロイドーシスの研究・診療を専門とする長崎国際大の安東由喜雄学長は「加齢に伴い発症リスクは高まり、決して特別な病気ではない」と警鐘を鳴らす。症状や治療の現状などについて尋ねた。
 アミロイドーシスは、アミロイドと呼ばれるナイロンのような線維状のタンパク質がさまざまな臓器に沈着し、体の異常を起こす病気の総称。心臓に沈着すると心肥大や不整脈が起こり、心不全になる。複数の臓器にアミロイドが沈着する「全身性」と、特定の臓器に限ってたまる「限定性」に大きく分類される。
 猪木さんが患っていたのは「老人性全身性アミロイドーシス」。主に80歳以上に多い病気で、日本人の場合、80歳以上の約15%は、心臓や腱(けん)にアミロイドがたまっているとのデータがある。加齢と共に本来の機能が低下したタンパク質が増えるなど老化が引き金になっていると考えられるが、そのメカニズムの詳細は分かっていない。
 症状として手足のしびれなどがあるが、老化だろうと気に留めない人がほとんど。息苦しさや疲労感、動悸(どうき)、足の腫れといった心不全の症状が出て初めて異常に気付く人が多い。
 今のところ根本的な治療はないが、飲み薬で症状が少し改善することが期待される。新たな研究もあり、私を含むチームの共同研究として、一定の年齢になったらサプリメントを予防として投与するプロジェクトが始まりつつある。治験段階に入っている治療法もあり、世界中で開発が進んでいる。
 高齢化が進む中、アミロイドーシスは誰でもなり得る病気だ。楽天の初代監督で野球評論家の田尾安志さんもこの病気の発症を公表している。決して特別ではないこの病気の存在を知ってほしい。


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