多摩川の治水計画見直しへ 想定超の流量、温暖化も考慮

東日本台風の被害を教訓とした緊急対策で、しゅんせつや河道の掘削、樹木の伐採などが進む多摩川=川崎市幸区

 記録的豪雨となった2019年10月の台風19号(東日本台風)で、増水した多摩川のピーク流量が中流部で毎秒7千立方メートル(推定値)に上り、国の治水計画の想定値を上回っていたことが、国土交通省京浜河川事務所の試算で分かった。同台風では川崎市や東京都世田谷区などで深刻な水害が起きただけに、国交省は既存の計画に基づいて河川改修を進めても、気候変動で今後さらに激しさを増す雨を安全に流せないと判断。治水計画を見直し、抜本的な対策を検討する考えだ。

 流量の試算結果は、今月3日に開かれた多摩川河川整備計画有識者会議で報告された。公表まで3年近くを要した理由について、同事務所は「慎重に検討したため」と説明した。

 東日本台風が伊豆半島へ上陸した19年10月12日を中心に、多摩川の上流部では観測史上最多の雨量を記録。激流によって中流部の水位計は流失した。そのためピーク時の詳細な水位を把握できていなかったが、流されずに残っていた予備の水位計の記録を基に当時の流量を試算したという。

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