危険水域間近

 「…結果には一喜一憂しない。政治の責任を果たすべく、一つ一つ結果を出すことが重要だ」と話すのを聞いて、ああ、この人もまた「一喜一憂」の使い方を間違えている、と感じたのは9月の半ば頃だった。内閣支持率の低下に対する岸田文雄首相のコメント▲一喜一憂しません-がぴたっとはまるのは、何かの拍子に支持率が急に上向いた時だろう。この評価に決して浮かれることなく、しっかりと地に足を着けて政権運営に-と▲事態は真反対なのだから、まずは数字を深刻に受け止め、憂うべきは憂えて、原因を懸命に探してもらわねば調査の意味がない。ジタバタしません…などと「泰然自若」を気取っている場合ではないのだ▲首相は臨時国会冒頭の所信表明演説で、看板の「聞く力」を「厳しい意見を聞く姿勢」にバージョンアップさせた。それでも…。先週末の世論調査によると、内閣支持率は9月の調査からさらに5ポイント下がって35.0%。“危険水域”がそこまで来ている▲安倍晋三元首相の国葬、旧統一教会と自民党の根深い関係、物価高騰に対する無策。支持率急落の理由が比較的はっきりしているのは救いだろうか。それとも、あれもこれも、で一度には手がつけられないか▲ここ数日の風の冷たさ、誰より敏感に感じているかもしれない。(智)

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