読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、28歳、会社員の男性。結婚、妻の妊娠と、ライフイベントで出費があり、貯蓄が減ってしまい将来が不安になっている相談者。これからどんな貯蓄計画を立てればよいでしょうか。FPの鈴木さや子氏がお答えします。
28歳、会社員です。今年結婚しました。同い年の看護師の妻は現在妊娠中で、来年出産予定です。
結婚、妊娠と人生においてかかる支出が多くなり、貯金がほぼなくなってしまいました。現在、貯金は50万円、投資金額は100万円です。さらに、奨学金が200万円あります。今後の人生が漠然と不安になっています。今後どのように貯蓄計画を立てればよいでしょうか。
【相談者プロフィール】
・男性、28歳、会社員
・妻:28歳、看護師、現在1人目妊娠中(2月出産予定)
・お住まいの都道府県:九州地方(のちに都心部に住む可能性大)
・住居の形態:持ち家(戸建て)
・毎月の世帯の手取り金額: 43万円
・年間の世帯の手取りボーナス額:120万円
・毎月の世帯の支出の目安:27万円
【毎月の支出の内訳】
・住居費:5万円
・食費:4万5,000円
・水道光熱費:1万5,000円
・教育費:5,000円
・保険料:2万3,000円
・通信費:1万円
・車両費:8万円(車2台持ち。含自動車税)
・お小遣い:2万円
・その他:2万円
【資産状況】
・毎月の貯蓄額:3万円
・現在の貯金総額(投資分は含まない):50万円
・現在の投資総額:100万円
・現在の負債総額:奨学金200万円
・ボーナスからの年間貯蓄額:50万円
鈴木:現在一人目のお子さんを妊娠中のパートナーがいらっしゃるとのこと、誕生の日が楽しみなことでしょう。結婚、妊娠などイベントにはお金がかかるもの。現時点で貯金がなくても、これからご夫婦で資産形成していけば大丈夫です。具体的にどのようにすればよいか、一緒に考えていきましょう。
お金の使い道の不明点を洗い出して
支出の内容を拝見したところ、毎月の手取り収入が43万円、毎月の支出が27万円とあるのに対し、毎月の貯蓄は3万円ですので、使い道が不明な金額が13万円あります。奨学金の返済金など記載がない支出もありますが、返済以外にはどのような使い方をされていますか?その使い道についても、ぜひ一度ご夫婦で書きだしてみてください。
投資総額が100万円あるので、iDeCoやつみたてNISAなどでの積立投資をされているのかも知れません。もし積立投資をしているのであれば、今は積立額を減らして、できるだけ現預金の割合を増やすことを優先しましょう。なぜなら、近いうちにお金を使う予定があることと、必要予備資金の貯金ができていないからです。
近いうちに使うお金、出産関連費用はいくら必要?
これから出産も控えており、出産費用や育児グッズにもお金がかかります。出産費用の多くは、健康保険からもらえる出産育児一時金(1児につき42万円)でまかなえますが、ベビーカーやチャイルドシートなどベビーグッズを、レンタルなどを活用して費用を抑えたとしても、10~15万円程度はかかると思われます。また出産するまでに、切迫早産などで入院費用がかかる可能性もありますし、里帰り出産をする予定であれば交通費もかかるかもしれません。50万円あれば足りる可能性も高いですが、預貯金をもう少し増やしておけると安心でしょう。
必要予備資金を準備しましょう
必要予備資金とは、何かあった時に半年から1年間は収入がなくても生活できるよう、準備しておきたいお金のことです。ご相談者の場合、お小遣いを除いた毎月の支出が25万円ですので、半年分から1年間分、すなわち150~300万円が必要予備資金として準備したい金額の目安です。必要予備資金はできれば預貯金が良いですが、すぐに売却してもよいのであれば、株式などの投資資金として持っていても問題はありません。ただし必要になった時に相場が悪く下がってしまっている時は売却したくなくなるものです。すぐに現金化できる方法で持っておきましょう。
今後の貯蓄プランはどうなる?
それではどのように貯蓄をしていくと良いでしょうか。1年後(お子様が生まれて10カ月後くらい)に、生活費の半年分である150万円を預貯金で作る方法を考えます。
今は毎月の貯蓄が3万円、ボーナスからの貯蓄が年50万円と、貯められている金額は年間86万円。このスピードを少し上げたいですね。
しかもパートナーが産休に入ると収入は下がってしまいます。ご夫婦それぞれの手取り収入がわからないため、仮にご夫婦の手取り収入が同額として、考え方をお伝えします。
【試算条件】
◆世帯の手取り収入
現在:毎月43万円 ボーナス120万円
産休後:毎月36万円 ボーナス120万円
(※)税金や社会保険料等については概算にて試算。産休・育休中の妻のボーナスは、社会保険料免除となるため増額する可能性あり
◆貯蓄目標:1年後150万円
現在の貯蓄が50万円ありますが、出産時になくなることを想定して、1年間で150万円の貯蓄を目指します。
・毎月の生活費:27万円
・毎月の奨学金返済:(a)万円
・積立投資?:(b)万円
・他の使い道:(c)万円
・貯蓄:(d)万円
現在は(a)+(b)+(c)+(d)が16万円ですが、産休後は9万円くらいになってしまいます。これを基に(d)の毎月の貯蓄額をいくらにすれば良いか、考えてみましょう。
【150万円貯めるための必要積立額】
プランA:ボーナスからの貯蓄90万円、毎月の貯蓄5万円
プランB:ボーナスからの貯蓄60万円、毎月の貯蓄7万5,000円
プランC:ボーナスからの貯蓄48万円、毎月の貯蓄8万5,000円
現在は、ボーナスのうち50万円を貯蓄されていますので、プランCに近い状態です。1年後に150万円貯めるためには、8万5,000円の積み立てが必要となりますね。しかし、奥様が産休に入られてからは、世帯の手取りが約7万円減る計算ですので、8万5,000円の積み立ては現実的でないでしょう。そこで、ボーナスから貯蓄する金額を増やしたプランAが選択肢となります。奨学金返済が4万円以内であれば、計算上は産休に入ってからも5万円の積み立ては可能です。
積立投資をされているか不明ですが、(b)と(c)の使途不明金と向き合って、今より2万円多く貯蓄できるように工夫してみてください。
見直せるとしたら保険料
支出を拝見すると、目立って高すぎる費目はありません。強いて言えば月2万3,000円かかっている保険料が気になります。自動車保険や火災保険、地震保険以外の保険とすると、見直せる余地があるように思います。老後資金などのために終身保険など貯蓄型保険に入っているのであれば、まずは手元資金を増やすために、保障を減らして保険料減額を担当者に相談されると良いでしょう。また、医療保険などに過剰に加入していないかもチェックしてみてください。
お子様が生まれたら、今度は教育費の貯蓄もする必要があります。今のうちに、貯蓄できる家計にしておくと安心ですね。安心してパートナーが出産に臨めるよう、ご夫婦一緒にお金の使い道を整理し、貯蓄計画を立ててみてくださいね。