“客の不審な行動見抜く” コンビニ店員が「防波堤」に 長崎県内の電子マネー請求被害

神田さん(左)にかかってきたニセ電話詐欺を防いだ田中さん=平戸市生月町、ファミリーマート生月大橋店

 ニセ電話詐欺で最近目立つのが、コンビニで電子マネーカードを購入させ、番号を聞き出す手口。長崎県内でも被害は後を絶たないが、来店した客の行動を不審に思った店員が「防波堤」となり、被害を食い止める事例も増えている。
 9月1日午前、平戸市生月町の船長、神田三太夫さん(71)はパソコンでネットニュースを見ていると、突然画面に「ウイルスに感染した」と警告メッセージが現れた。「マイクロソフト社」の文字もある。神田さんは信用し、記載されていた連絡先に電話した。
 電話に出たのは片言の日本語を話す男。「ウイルスに侵された。解除にはカードが必要。ファミマは近くにあるか」と聞かれた。神田さんが「ある」と答えると、男は「グーグルプレイカードがあるから買ってきてくれ。3年で5万、5年で8万、一生で10万」と指示した。

ニセ電話詐欺の県内被害状況

 神田さんは半信半疑のまま、近くのファミリーマート生月大橋店に向かった。店で勤務していたのは社員の田中美穂子さん(52)。すぐに神田さんの様子がいつもと違うのに気付いた。「どんなカードがあるの」。神田さんは田中さんに尋ねた。それまでカードを購入したことなどなく、神田さんが買いたいと言っているのは高額の「5万」。不審に思った田中さんが神田さんに理由を尋ね、詐欺と確信。警察に通報した。
 35歳から店員をしているベテランの田中さん。過去にもニセ電話詐欺を数回防いだことがあった。来店した客の動揺や不安を見抜く観察眼が生きた。住民同士のつながりが深い土地柄もいい方向に作用した。田中さんは「これからも『失礼ですが』と尋ねる心がけを続けたい」と話す。
 神田さんも「危ないところを間一髪、顔なじみの田中さんに助けてもらった」と感謝を口にする。
 県警生活安全企画課によると、ニセ電話詐欺被害の認知件数は9月末までで88件。一方、未然に防止した事案は117件で、被害件数を上回っており、前年同期の約1.6倍に増えた。被害を阻止したのは多い順に家族・知人47件、コンビニ39件、金融機関23件など。


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