生活困窮者、世代や状況に応じ支援 官民で事業展開 長崎

県内の主な支援事業、活動

 2015年に施行された生活困窮者自立支援法に基づき、県内自治体は困窮者向けの自立相談や住まいの確保、就労の手助けなど、さまざまな支援事業を展開している。民間の取り組みも増えてきた。
 県によると、22年8月末時点の県内の生活保護受給者数は2万6172人(2万784世帯)。新型コロナ流行の影響もあってか、新規の自立相談件数(20年度)は7346件で前年の2倍以上に。支援策の拡充が求められる。
 社会福祉法人みのり会が運営する「あいこう園」(長崎市布巻町)は県内に3カ所ある救護施設の一つ。生活保護受給者を対象に、生きづらさを感じ、自立した生活が困難な人を受け入れている。障害の有無も問わず、就労に向けた訓練などをしている。髙比良宏輔施設長は「路上か一般的な社会生活か、ゼロか100かではなく、本人の意向に沿った支援も可能。つながってさえいれば手助けができる」と話す。
 今年4月に活動を始めた「みんなの食堂」(長崎おとな食堂実行委)は3カ月に1回、ひとり親世帯や高齢者らに食料や生理用品などを配布。弁護士などによる相談支援もしている。「本当は相談したくてもどうしたら良いか分からず、窓口までつながらない人がいる。食料支援をきっかけに専門家に相談してほしい」と発足人の鳥巣シオリさん(71)。次回は12月4日に長崎市内で活動予定。
 今後、困窮者支援はどのような方向に向かうべきなのか。「貧困パンデミック-寝ている『公助』を叩き起こす」などの著書があり、東京を中心に夜回り活動などをする一般社団法人「つくろい東京ファンド」の稲葉剛代表理事(53)は「社会に自己責任論がまん延し、本人もそれを内面化している。生活保護への負のイメージも申請などをためらわせる」と指摘し、「困窮者の世代や状況に合わせた相談ツールや、相談しやすい社会的な雰囲気づくりが必要だ」と述べた。


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