今季限りで移籍が決まっている自転車ロードレースプロチーム「宇都宮ブリッツェン」のエース増田成幸(38)。延べ11季にわたり活躍した赤いジャージーでの最後のジャパンカップは「余すところなく、全身全霊で」と味わい尽くした。16日のロードレースは沿道から惜別と激励の拍手を一身に受け、山岳賞も獲得。「やっぱりジャパンカップっていいな」-。宇都宮が誇る国内最高峰のレースで、最後まで背中で語り「来季、僕がチームを出れば若手も試練の中で成長してくれる」と次代に託した。
チームは世界トップチームの中で苦しみ、自身は27位。悔しさをあらわにしつつ、「形に残るものが一つだけ」。9周目に自身初めて獲得した山岳賞は「勝手に体が動いた」という。
地元のレースで「誰かが取らないと」という責任感と沿道の応援がペダルを踏ませた。拍手と大歓声が包んだ単独での登頂に「手を振っちゃいました。なんか、応えたくて」。真剣勝負の中での、増田なりの感謝の形。「忘れられないレースになった」としみじみ語った。
23日に39歳となるが、ある選手は増田を「いくつになっても枯れない」と評する。本人は「モチベーションがなくなった瞬間に枯れる。幸いそれは続いているから」。来季の移籍は海外挑戦へのステップアップであり、日本自転車界の将来が懸かるプロジェクトの一員でもある。加齢による確かな衰えを感じつつも「39歳の限界を見てみたい」と言う目は輝いている。
立っているのは「自分が1位じゃなくていい」という境地。日本を代表するロードレーサーの自覚も大きい。新チームでも主将という立場で「次の世代につながるような、いいチーム、その基礎を築きたい」という思いだ。未来へと続くバトンはその手にある。