J3昇格に向かってラストスパートをかけるヴェルスパ大分。残り6試合となり現在の順位は暫定7位。直近の2試合で痛い連敗を喫し、厳しい状況に追い込まれている。この状況を受け止め、打開しようと静かに闘志を燃やしているのが在籍8年目、生え抜きアタッカーの利根瑠偉だ。「20代の頃は個人として上のカテゴリーでプレーできればいいと思っていたが、今はチームでJリーグを目指したいとの思いが強い」と明かす。
大分最大の武器となるサイド攻撃の一役を担う利根は、今季も主力としてピッチに立つ。ここ数年は安定した力を発揮しているが、今季は爆発力が増した。スピードと瞬発力で勝負する利根に十分なスペースを与えるため、チームは中盤のパスワークで相手を寄せて、一気にサイドに展開する。周りのサポートがあり、「ゴールに直結する仕事ができるようになった」(利根)。
チャンスメークとフィニッシュの両面で、存在感を発揮できるようになってからは、相手のマークが厳しくなった。しかし、利根は「警戒されているのは分かるが、逆手に取ればプレーの幅が広がる」とポジティブだ。得意のドリブルを最初から仕掛けず、相手の背後のスペースに走り込み、相手を引きつけ周囲の選手を生かす。「チームのために何ができるかを考えるようになった」と話す。
シーズン終盤に入ってからの好パフォーマンスは、J3への思いと、チームの成熟という2つの要素が重なったからだと考えられるが、利根自身は意外な理由を口にする。
「食事面が一番大きい。昨年までは夏場がキツくて、体のキレを失うことがあった。でも今年はそれがない。妻がバランスの良い食事を用意してくれることが大きい」
ノロけるでもなく、真面目な顔で言い切った。8月末にけがをしたときも、故障箇所の回復に効くとされるものが食卓に並んだという。
「Jの舞台に立つ」と語る利根は、今季J3昇格を決めて、最愛の妻の内助の功に結果で報いる。あまりに格好良すぎるが、好パフォーマンスを持続する利根の脳裏には、きっとこんなシナリオが描かれているはずだ。
(柚野真也)