諫干紛争「裁判で解決」4割否定的 有明海沿岸4県住民 「専門家主導」望む声最多

 潮受け堤防の開門を巡る訴訟が続く国営諫早湾干拓事業に関し、「紛争解決に裁判は役立っていない」などと有明海沿岸4県住民の4割以上が否定的に捉えていることが、佐賀大などの研究者グループが実施したアンケートで分かった。最も望ましい解決方法としては「(環境や地域問題などの)専門家による解決」「(訴訟)当事者を含めた地域住民による解決」と考える住民が多い。
 「豊かな海と地域社会の形成」研究プロジェクト(研究代表者・樫澤秀木佐賀大教授)が住民の意識を把握するため、長崎、佐賀、福岡、熊本4県の各県庁所在地中心部と有明海沿岸(長崎県は諫早、島原両市)の18歳以上を対象に昨年9月、実施。2100人に郵送し、706人から回答があった(有効回収率33.6%)。
 諫干事業とその影響について興味、関心が「ある」「ややある」は計44.6%を数え、「全くない」「あまりない」の計30.9%を上回った。「諫干事業で地域に何が起きたと考えるか」の質問に、「そう思う」「やや思う」が最も多かったのは「農業者と漁業者の対立」の計64.2%。「住民間の対立」「諫早湾・有明海の漁業衰退」が続いた。開門に伴う期待は「有明海全体で魚や貝、ノリがたくさん取れる」、心配は「農地の塩害で作物が取れなくなる」がそれぞれ31.6%、41.8%で最多だった。
 諫干事業を巡っては、堤防閉め切りと漁業被害に因果関係があるとして、漁業者らが国に開門を求めた裁判など複数の訴訟が続き、閉め切りから25年以上がたつ今も解決の糸口は見えない。
 調査では、「裁判が紛争の解決に役立っていない」「あまり役立っていない」とする回答が計44.5%だったのに対し、「役立っている」「やや役立っている」は計18.7%ににとどまり、裁判での解決に否定的な住民が多かった。最も望ましい解決手段を尋ねたところ、「専門家による解決」(46.9%)、「当事者を含めた地域住民による解決」(27.8%)が上位を占め、「裁判による解決」は13%だった。
 結果は15日、長崎市内であった集会で報告。中心となって調査を企画した福岡大の開田奈穂美講師は「今回のアンケート結果が、諫早湾干拓を巡る対立を解消するための一助となればと考えている」とした。


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