平和首長会議閉会 核廃絶へ「ヒロシマアピール」採択 平和文化育む決意

核戦争のリスクが高まる現状を踏まえ、平和文化の醸成に向けて意見を交わした(右から)田上市長、チョウドリー氏、松井市長ら=広島市中区、広島国際会議場

 ロシアのウクライナ侵攻で核使用の危機が高まる中、広島市で開かれた平和首長会議の第10回総会は20日、依然として核抑止論に頼る国を批判し、核兵器廃絶に向けて草の根から「平和文化」を育む決意を示す「ヒロシマアピール」を採択して閉会した。
 アピールは、ロシアの核の威嚇で「核戦争勃発のリスクは最も高くなった。核保有国は莫大(ばくだい)な財源や技術を核軍備の近代化に投入している」と非難。為政者に政策転換を迫るため、将来を担う若い世代が「核使用の非人道的結末を認識し、平和意識を醸成する」環境づくりに取り組むことを確認した。
 首長会議が目標に掲げる「平和文化の振興」について、提唱者のアンワルル・チョウドリー元国連事務次長は「一人一人が、非暴力を全ての生活や活動に根付かせることで実現する」と紹介。ジェンダー平等や幼少期からの平和教育が重要とし、「一つの声が小さい波をつくり、大きな集団の波になり、世界を変革させる」と述べた。
 チョウドリー氏とのパネル討論で、会長の松井一実広島市長は「平和は広い概念。戦闘行為を止めるだけでなく、互いに対話し多様性を認めるプロセスが平和」と指摘。副会長の田上富久長崎市長は「平和は誰かがつくってくれるものではなく、自分たちでつくるもの。広島、長崎が発信してきた『核兵器はいらない』というメッセージを、全ての都市が自分たちの言葉で伝えていくことが新しい時代の在り方」と提言した。
 首長会議には核保有国を含め166カ国・地域の8213都市が加盟(1日現在)。総会は2017年の長崎開催以来5年ぶりに開き、2日間で9カ国102都市の代表者176人が対面で参加。オンライン参加の都市もあった。次回総会は25年に長崎市で開く。
 20日は国内加盟都市の総会もあり、来年の核兵器禁止条約第2回締約国会議に日本政府もオブザーバー参加するよう、岸田文雄首相に要請することを決めた。


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