<金口木舌>県系人が頼れる拠点を

 数年前、娘が豊見城市青少年国際交流事業に参加し、ハワイで豊見城村人会の歓待を受けた。県系人家庭でのホームステイも体験した

▼滞在先の「Gushi」という姓が気になった。村史や移民調査資料などをひもとくと、妻の母方のムートゥヤー(本家)の具志家につながった

▼親類であることを示す家系図をハワイの具志さん夫妻に送るとたいそう喜んでくれた。お礼の手紙には移民1世の古い写真が添えられていた。県系人たちの自身のルーツに対する関心は高い

▼世界のウチナーンチュ大会に参加するため海外の県系人が先祖の土地を踏む。少ない情報を頼りに親類を探そうとする人たちも少なくないが、そうした人たちを迎え入れる「ムートゥヤー」が肝心の古里にない

▼東洋大学名誉教授の比嘉佑典さんやジャーナリストの三木健さんが「世界ウチナーンチュセンター」の設置を呼び掛けている。偶然の発見に頼らず、市町村史や移民調査資料などを多言語で検索でき、アイデンティティーを確認できるよりどころの存在が今こそ必要だ。

© 株式会社琉球新報社