V長崎 2022年シーズン総括 想定外の11位低迷 カリーレ体制「仕切り直し」

今季の順位推移グラフ

 サッカーJ2、V・ファーレン長崎の2022年は、シーズン途中の監督交代も実らず22チーム中11位で幕を閉じた。ファビオ・カリーレ新監督が指揮を執り始めた時点でJ1自動昇格圏との勝ち点差は2桁に離されていたため、昇格に届かなかったのは「想定内」とも言えるが、ここまでの下位は「想定外」。結果、内容ともに停滞したまま、最後は7試合未勝利でサポーターの期待に応えられなかった。

  誤算に次ぐ誤算

 ピッチ外が慌ただしい1年だった。松田浩・前監督が出だしでつまずき、クラブは早々と解任を決断。その後復調し、結果的に解任発表が劇的勝利を収めた第21節の直後になったのは、チーム内外に波紋を広げた。
 カリーレ新監督への引き継ぎは当初、スムーズに見えた。第24節から指揮を執ったブラジル人指揮官は負けなしを11戦まで伸ばし、自動昇格圏との勝ち点差を「8」に縮めた。しかし、守備にほころびが目立つようになると勢いがストップ。一向に修正が進まず「J1昇格と来季への積み上げ」の両にらみで始動した新体制は、収穫に乏しいまま初年度を終えた。

来季の続投が決まったカリーレ監督。今シーズンの反省を踏まえ、進化が求められる=諫早市、トランスコスモススタジアム長崎

  見えない理想形

 気掛かりなのは、新指揮官の「色」がいまだに見えてこない点だ。
 カリーレ監督は、ボール保持を重視するポゼッションサッカーを志向。その上で「バランス」と「ボールを地面に付けて三角形でつなぐ」の2点をよくポイントに掲げる。フロントは過去の反省を踏まえて、監督交代時に新たなヘッドコーチと分析担当コーチも3人セットで招聘(しょうへい)。戦術を落とし込むためのバックアップ体制は手厚くなったが、発足初年度は成果が出なかった。
 その理由について、複数の選手は新型コロナウイルスの影響を指摘する。前監督のスタイルから変化を試みていた夏の時期、チーム内に感染者が出て十分な練習を積めなかった。加えてコロナ禍による試合中止のしわ寄せで、7連戦をこなす羽目になった。どっちつかずの状態で試合に臨み、ようやく試合間隔が1週間に戻ったころには昇格圏内が遠のいていた、というのが彼らの言い分だ。確かに選手起用やフォーメーションを含めて采配は最後まで流動的で、手探り感が拭えなかった。

  求められる進化

 カリーレ監督は就任後の早い段階から「将来を考えて若い選手を8人から10人くらい獲得したい」と理想と現実のギャップを語っていた。これまでの選手の顔触れに自信を持っていたクラブだが、全幅の信頼を寄せる新指揮官の指摘を受けて、今オフはその意向に沿った選手編成を進める方向だ。
 既に来季の加入が発表されているDF白井陽貴(法大4年)、MF瀬畠義成(東洋大4年)は指揮官が希望する「若い選手」。これに続く補強がどうなるのか、そして誰を放出するのか。今季中位に低迷したため、現状で戦力に数えている選手が去る可能性もある。あらゆる可能性を踏まえて、まずは緻密なチームづくりが求められる。
 とはいえ、V長崎は他に比べて来季への十分な準備期間もある。指揮官の意向を色濃く反映し、カリーレ長崎の「仕切り直し」とも位置付けられる23年シーズン。勝負は水物だが、少なくとも掲げるサッカーの全体像は見えてくるはずだ。


© 株式会社長崎新聞社