ユニクロやドトールが業績好調も…小売企業の決算速報から見る、コロナ禍から復活を遂げた企業、苦戦する企業

世界的に株価はなんともスッキリしない値動きが続いています。10月21日時点で米国のダウ平均は31,082ドル、日経平均は26,890円となっていますがこれらは昨年末と比べてそれぞれ15%、7%程度値下がりしています。


株価が冴えない理由

ダウ平均は一時は3万ドルの節目を割り込み、9月30日に28,725ドルまで値下がりしたこともありました。株価が軟調な理由はなんといっても米国の金利上昇にあります。米国は高インフレを鎮めるため中央銀行にあたるFRBが異例のスピードで金融引き締め(利上げ)を実施しています。

FRBの金融政策をダイレクトに反映しやすいといわれる米国2年債利回りは4.4%まで、10年債利回りも4.1%まで上昇しています。2年債利回りは年初は0.7%、10年債利回りも1.5%程度でしたので、1年足らずの間にとてつもないペースで米国金利が上がっていることがわかります。

金利上昇がなぜ株が下がる理由になるのかわからない方もいらっしゃるかと思いますが、こんな風に考えてみてください。今株式投資をしている方の中には、日本で預貯金していてもほとんど金利はつかないので、それなら株式投資でリスクを取ってお金を増やしたいと考えた方もいらっしゃるのではないでしょうか。ところが、もし日本国債を買えば4%のクーポン(金利に相当)がもらえるとしたらどうでしょう?株式はやめて国債を買いたいという方もいるのではないでしょうか?

株式投資には値下がりリスクがつきものですが、債券投資は原則として満期まで保有しておけば元本が戻ってきます。その上で毎年決まった額のクーポンが入ってくるので、基本的に購入した時点でキャッシュフロー(お金の流れ)が確定します。このように債券投資は株式投資に比べてリスクが低く、まして先進国の国債への投資はさらにリスクが低い投資です。

にもかかわらず4%のクーポンがもらえるのであれば保有している株式を売って債券を購入すれば良いという投資家が増えてきます。このように投資家は国債のような無リスク資産(国債)との比較でリスク資産(株式)への投資を検討するため、金利が上がると株式市場には下落圧力がかかりやすくなります。さらに、FRBの金融引き締めが急激すぎて、来年以降米国経済が景気後退に陥ってしまうのではという不安も増していることも株価下落につながっています。

ただ、さすがにそろそろFRBも利上げペースを緩めるのではとの観測も出てきており、少し株価の反発につながっているようです。いずれにせよこの先もしばらくは米国の金融政策や金利状況が最大の注目ポイントであることは間違いありませんので、ぜひ皆さんも注目なさってください。

一足早く小売企業の決算出揃う

ここからは日本のトピックに移っていきましょう。まもなく3月決算企業の中間決算の発表が本格化しますが、その前に小売業を中心とした2月や8月決算企業の決算発表がほぼ出揃いました。

まず、TOPIXと小売業の株価パフォーマンスを比較すると、以下のグラフのように小売業の好パフォーマンスが目立ちます。これはコロナ禍からの正常化による恩恵への期待、中でも外国人観光客(インバウンド)の訪日による恩恵期待が高いと思われます。以前と同様に外国人観光客が本格的に日本に来るようになれば、年間5兆円かそれ以上の消費が期待されています。ホテルや鉄道、観光、小売などは最も恩恵を受けやすい業種でしょう。

それではまだ本格的に影響が出る前ではありますが、6ー8月決算の好不調企業を見ていきましょう。

図表 TOPIXと小売業指数の推移

まずは靴専門チェーン国内最大手のABCマート(2670)です。6ー8月期の売上高は前年同期比14%増の670億円、営業利益は57%増の94億円と非常に好調でした。同社は決算発表と合わせて今期の業績予想を上方修正しており、好調な決算を受け株価も堅調に推移しています。同社は好決算の理由を「国内外経済のコロナ禍からの立ち直りが想定より早く進んでいる」と説明しています。

続いてドトールコーヒーやエクセルシオール、星乃珈琲などの喫茶店チェーンを展開するドトール・日レスホールディングス(3087)も非常に好調でした。売上高は16%増の316億円、営業利益は5億円の黒字と前年の5億円近い赤字からのV字回復を達成しています。こちらもコロナ禍からの正常化が進みオフィス街でのランチ需要などが回復してきたことが好調の要因のようです。

ユニクロやGUを展開するファーストリテイリング(9983)も安心の好決算でした。売上高は23%増の5360億円、営業利益は24%増の262億円でした。米国や欧州などの海外事業の好調が好決算につながったようです。

このように着実にコロナ禍からの復活を遂げている企業もあれば、残念ながらまだまだ回復途上の企業もあります。

例えば家電量販店大手のコジマ(7513)は売上高が3.4%減の701億円、営業利益は24%減の16億円となりました。白物家電やゲームの販売伸び悩みが響いているようです。コジマも含めた家電量販店は、コロナ禍で伸びたゲーム機や家電販売の反動も出ているとみられ、今後どのようにインバウンド需要を取り込めるかなどが業績回復の鍵になってきそうです。

必ずしも小売業だけに限りませんが、原材料費や人件費の上昇をどのように価格に転嫁しつつ顧客離れを引き起こさないか、また外国人観光客にどのように「爆買い」してもらうかが復活の鍵になりそうです。この年末また来年にかけて本格的な脱コロナ、経済正常化を期待したいですね。

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