<社説>世界県人大会 交流の喜び確かめ合おう

 新しい時代の幕開けだ。 第7回世界のウチナーンチュ大会が、30日の前夜祭パレードを皮切りに、31日~11月3日の日程で開催される。新型コロナによる1年延期を乗り越え、オンラインも交えての開催となる。県によると、28日時点で海外からの参加者は2345人となる。県民挙げて歓迎しよう。

 コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻で、世界は経済のブロック化や対立による閉塞感が強まっている。今だからこそ交流する喜びを確かめ、ネットワークを深化させる意義を沖縄から世界に発信する大会にしたい。国境を越えて広がるウチナーンチュの絆は、分断を克服する力になる。

 沖縄の海外移住は1889年に移民27人がハワイに出発したことに始まる。重労働や差別など移住先での過酷な生活に耐えながら懸命に働き、稼いだ金を沖縄の家族に送った。戦前は海外からの送金総額が一時は県歳入の6割以上になるほど、窮乏する沖縄社会の助けとなった。

 戦争で焼け野原となった沖縄にハワイのウチナーンチュたちが豚550頭を送った逸話をはじめ、琉球大学の創立支援など、沖縄戦からの救済・復興でも海外在住の県系人の尽力は大きかった。

 近年も2019年の首里城焼失に世界から悲しみの表明が寄せられた。離れていてもウチナーンチュはいつでも強い絆で結ばれてきた。

 米ハワイ州のデービッド・イゲ知事、米メジャーリーグドジャースのデーブ・ロバーツ監督など、世界を舞台にした県系人の活躍は沖縄に暮らす私たちの誇りでもある。

 沖縄をルーツに持つ人たちが国内外から一堂に集うウチナーンチュ大会は、一過性のお祭りではない。

 ウチナー民間大使の認証、世界ウチナーンチュ・ビジネスネットワーク(WUB)の創設、ジュニアスタディーツアーの開始、世界若者ウチナーンチュ事務局の立ち上げなど、大会ごとに次の発展につながる種をまいてきた。前回の第6回大会は10月30日を「世界のウチナーンチュの日」として制定した。

 今大会からは、どんな取り組みが生まれるだろうか。

 海外県系人と沖縄を結ぶ拠点作りとして「世界ウチナーンチュセンター」の創設が研究者などから提起されてきた。県が設置した「海外ネットワークに関する万国津梁会議」も昨年10月に、海外ネットワークの活動拠点を県内に設置することを盛り込んだ提言をまとめている。

 歴史研究やビジネス交流、文化芸能体験などネットワークの核となる場所が必要だ。機は熟している。センター創設の議論を前に進めたい。

 世界に42万人いるとされるウチナーンチュのネットワークを有効活用し、沖縄経済の自立的発展を共に目指していくことだ。世界から人が集まり交流する場所は国際平和創造の拠点にもなるはずだ。

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