「姑息」と「割愛」

 「役不足」で“不足”しているのは、その人の能力ではなく役割の重さの方。「破天荒」は「豪快・はちゃめちゃ」ではなく「前例のないこと」。「雨模様」は「降ったりやんだり」ではなく「雨が降りそうな様子」のこと▲毎年、秋になると結果が公表される文化庁の「国語に関する世論調査」は、慣用句や熟語の意味に対する世間の“誤解”をしばしばあぶり出してきた。今年のお題は「姑息(こそく)」と「割愛」だった▲では、ちょっとだけ解説。「姑」は「しばらく」、「息」には「休息」のように「休む」という意味があって「姑息」は「一時のがれ、その場しのぎ」をいう言葉だが、優勢なのは、そこから派生したとみられる「ひきょう・ずるい」▲「割愛」は出家の際に、人や物への愛着の気持ちを断ち切るという仏教用語から来た言葉で、元々は「惜しみながら思い切って手放す」ことを指す言葉。単に「不要な物を切り捨てる」わけではない▲姑息も割愛も、過去にこの調査で取り上げられたことのある“常連”ワードだ。一向に減らない誤用を我慢できない担当者がいるのかもしれない▲その文化庁は、宗教法人の認証をはじめとする宗務行政を所管する役所でもある。“姑息”な対応や説明の無造作な“割愛”が許されない立場に今、立たされている。(智)

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