ザ・ビートルズ『Revolver』スペシャル版、新技術を使った新ミックスへの絶賛レビュー

ザ・ビートルズ(The Beatles)の1966年の画期的なアルバム『Revolver』のスペシャル・エディションが2022年10月28日に発売され世界のメディアから、“啓示的で驚異的”、“より豊かで暖かく、噛み応えに満ちている”、“リアルタイムで実験の天才たちを体験”と絶賛されている。

新技術を使った画期的なミックス

プロデューサーのジャイルズ・マーティンとエンジニアのサム・オケルによる、スペシャル・エディションのステレオ・ミックスとドルビー・アトモス・ミックスの画期的なリミックス作業に、批評家たちは絶賛の声を上げている。

オリジナルの『Revolver』は4トラック・テープで録音され、ギター、ベース、ドラムが同じトラックに収められていたため、この二人はここ数年で発売されているザ・ビートルズ後期のアルバムの50周年記念盤のようなサウンドの新ミックスはできないだろうと思われていた。

しかしそういった考えはドキュメンタリー『ザ・ビートルズ:Get Back』で監督をつとめたピーター・ジャクソンのウィングナット・フィルム・プロダクションズに所属するエミール・デ・ラ・レイ率いるサウンドチームが開発した最先端の「デミックス / de-mixing」技術が登場する前のことだった。この新技術によって、過去に4トラックで録音された音源を分離し、ステレオでリミックスすることが可能になったのだ。

世界の音楽誌からの絶賛

イアン・フォートナムはクラシック・ロック誌にこう書いている。

「誰も彼らがどうやったのか知らない。しかし、彼らはやってのけたのだ。そして、その結果は、啓示的であり、驚くべきものである」

「このアルバムの14曲は、素晴らしいものであることは周知の事実である(90年代には常にベストアルバムに選ばれていた)。ジャイルズ・マーティンは“For No One”や“Here There And Everywhere”、そして不朽の名曲“Tomorrow Never Knows”を美しく磨き上げるように敬意を込めてレストアを行い、特に感情的なパンチを与えている」

今回のスペシャル・ディションを「リボルバーレイション(Revolver とRevolutionを合わせた造語)」と呼ぶDaily Mailのレビューで、Adrian Thrillsはこう綴っている。

「サウンドはよりリッチで暖かく、噛み応え十分だ。楽曲は、従来のアレンジを一切変更せず、そのままの形で収録している。“Revolver”は結局のところ、時の経過という試練に耐えてきた楽曲がすべてなのだ。このアルバムが永続的な影響を与えたのも不思議ではない。ザ・ビートルズがこのように生き生きとよみがえったのを聴くのは、この秋の音楽の楽しみの一つだ」

ガーディアン紙は、レビューで5つ星の最高評価をし、筆者のアニー・ザレスキは「実験的な天才がリアルタイムで登場」という見出しで、こう熱弁している。

「若きマーティンは賢明にも、現代的な洗練やトリックを加えることによって21世紀の耳に合わせてレコードを調整することはしていない。その代わりに彼が行ったアプローチは、元々あった楽曲のニュアンスを現代の視点から増幅することであり、聞き慣れた曲でさえ新鮮に聞こえてくる」

「“Revolver”には、2017年にリリースされた“Sgt Pepper’s Lonely Hearts Club Band”のリミックスのような万華鏡のような深みは必ずしもないが、それはわずかな違いだろう。むしろ、“Revolver”の新しいディテールは、曲の中のより深い意味を教えてくれるのだ。より顕著になったのは、“Here, There and Everywhere”での低い光のバックハーモニーが、この曲を昔ながらのロックンロール・ラブソングとして作り変え、“I Want to Tell You”ではピアノが語り手の不安を映し出し、“Taxman”でのマッカートニーの沸き立つウォーキングベースがジョージによる歌詞の辛辣でシニカルな音色を照らしているということだ」

また、Spill Magazine誌のAaron Badgleyはこう評している。

「(ジャイルズ・マーティンは)アルバムにずっとシャープな音を与えている。ヴォーカルはより際立っていて、新ミックスの中で失われることはない。“Dr. Robert”には信じられないほどのエネルギーがあり、新しいミックスでそれが伝わってくる。“She Said She Said”も新しいミックスの恩恵を受けて、少しレイドバックした曲になっているが、素晴らしいボーカルはそのままだ」

「(ジャイルズ・)マーティンは基本的に父親がやったことをすべて取り入れながら、それぞれの曲のある側面を強調している。フレンチホルンをフィーチャーした“For No One”のような曲は、曲の美しいアレンジを維持しつつ、ヴォーカルをより前に出すことで、ピカピカの新しいミックスの恩恵を受けている」

Written By Paul Sexton
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ザ・ビートルズ『Revolver』スペシャル・エディション
2022年10月28日発売

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